俺たちの遺伝子は交わらない

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「先生、さっきの休み時間、美術の原田と一緒に廊下を歩いてた。私以外の女と仲良くしないで」 神奈木蜜子は不器用だ。 俺の気を引こうと上目遣いを繰り出すのだが、目線を上げすぎて白目が剥き出している。いつか観たB級ホラー映画を思い出した。 天才は何かに突出している分、欠如も多い。 「上目遣いなんざ効かねーよ。どーせなら『吊り橋効果』くらい使ってみろよ」 「先生、話逸らした」 「原田先生は副担任なんだから仕方ねぇだろ。それにお前に俺を縛る権利はねぇ」 「欲求不満なら私を抱いて」 彼女は煙草を持たない俺の左手を掴むと、自らの胸に押し当てた。 唆られる質量はないが、うっかり指が動いてしまう前に振り払う。 「ど阿呆。ガキに興味はねぇよ」 神奈木蜜子は理解し難い。 綺麗にひと回り年の離れた、しょっぱいおっさんに御執心なのだ。 大体どうして、女性と一緒に歩いているだけで欲求不満の発想に結びつくのか。
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