序章-文の筆色、烏羽の如く-

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 ──ここはポップスターの隣に存在する小さく四季折々の景観が観られる事が特徴的な惑星、『ジャポネスク』。然れど存在自体は全宇宙に知られる事なくただそこに、ひっそりと有るだけだ。知っているのは我等一族のみと言っても過言ではないだろうな。  だから他所からの客人は基本的にいない。仮にいても全て敵と認識している、それは何故か。同じ惑星に住まう者とは言えども領地や流派の違い等で我等と敵対する者もいるからで。複雑なのだ、"忍"という奴は。 「頭領、少し宜しいでしょうか」 アイツからの文が届いたのは、しんしんと雪が降りゆく寒い冬の頃だった。     星のカービィ-祭囃子とシノビ共の宴-    *  左目に包帯を巻いた忍こと"ハクジ"から文を受け、目を通す。内容は要約すれば『里にある宝が狙われている』というものである。 ここ、ジャポネスクと言っても様々な地域が存在しており我等一族が住まうこの場所は『イロハの里』と我が命名した(忍達の名が和色名だった為)。 「文の差出人は…字体からして"クチナシ"か」 「とりあえず元気そうで安心しました。…ですがどういう事なんでしょうかね?」 「ふむ。兎にも角にもアイツに詳しく聞かねばなるまいな。文だけではいまいち状況が分からない」 「それに『頭領が望むなら寝返る事も可能』という趣旨も記されている。この里に伝わる宝なんて結構あるというのにクチナシがこれ程まで書くなんて、彼が所属している団は余程の物を狙っているとみます」 ハクジが冷静に判断を下していく。それと同時に微かに耳が動いたのを我は見逃さない、成程誰か帰ってきたのか。 「──おかえり、"アカネ"」 「アカネ、只今帰りました~! …ん? 何々誰からの文? ハクジ、見せて見せてー!」 「いいよ。ほら」 このお転婆娘はハクジの隣に移動し文を読んだ。へぇ、だの相槌を打ちながら。
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