序章-文の筆色、烏羽の如く-

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序章-文の筆色、烏羽の如く-

 ようこそ、ここに来るなんざ余程の物好きか暇人とお見受けした。我の偽名は"シッコク"、そして本名は"カラスバ"と申す。如何宜しく。 …おっと失敬。前置きはこれ位にして暫し我等の噺を聞いてくれないだろうか。我等一族はかつて世間一般から姿を消したと様々な文献に記され、挙げ句の果てには『そんな者は存在しなかった』と言い出すふざけた輩まで現れてしまう始末だと部下──育ての娘の一人から聞いた。 全く聞き捨てならないな。いくら廃れてきているとは言え存在しなかったはなかろうに。  ──さて、事の始まりは一枚の文からだ。 そこから先は我の仲間が話してくれるだろうから貴殿は飽きずに聞いてくれたらそれでいい。
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