第1章

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序章  とある双子姉妹と宇宙に纏わる一つの物語 Prolog  一面を遮る明瞭なガラスの彼方には、今まさに夢を叶えようとする者たちがいる。張りつめたように目顔は硬いものの、それでも未知なる天空(せかい)への希望を胸に抱いた彼ら、彼女ら。  ――――透明で絶対的な隔たりに指を滑らせ、少女はそっと奥歯を噛み締めた。  ガラス壁に映る蒼くて長い、艶のある髪。淡く反射する、どこか心残りを感じさせる己の顔。  生涯迎えないでほしいとさえ望んでいたこの日、この瞬間。  クリアな垣根越し越しに天上を見上げれば、雲一つない晴天が心を曇らす彼女を嘲笑うかのように、大きくいっぱいに広がっていた。  手の中に収められた携帯電話、ディスプレイに照らされる一枚の写真。  そこに映るは微笑みの自ら。その背後、我れに腕を回し密着する、似た目鼻立ちの少女。肩に掛かる赤髪、相貌に浮かべる無垢な笑顔。  彼女は瞳に返照するその少女、――――妹の名をひとたび空に唱えた。  それから思う、――――なぜ私があの場所へ届かず、彼女こそが近づけるのかと。  そうして夢を胸に秘めた彼ら、彼女らは宇宙(そら)への舞台装置へと乗り込み、――――やがてカウントダウンが始まった。  10、9、8……、準備不足な心を無視するがごとく刻まれる、無情なカウントダウン。  天に祈りを捧げるように胸元で手を組み、瞳を閉じた姉。 「――――緋那子(ひなこ)、どうか無事に帰ってきてください」  悔恨は不思議と失せていた。  心を埋めたのは妹の無事な姿、たったそれだけ。  3、2、1――――……、秒読み終幕と同時に、漆黒の世界へと旅立つ発射装置は放たれた。地を離れたそれは、みるみるうちに空高く昇ってゆく。  旅人は憶えた夢に想いを込め、新たなステージへと一斉に旅立ってゆく。  だけれども。  ――――――夢の続きを見ることは、誰一人として叶えられやしなかった。 第一章  拡張世界〈コンプレックスフィールド〉        1  視界右下に表示された薄青の円形ランチャーに指を這わせ、人の上半身を模ったアイコンをタッチすれば、横長長方形の半透明な仮想ウィンドウが視界中央に出現し、 「おおう、スゲェな……。これが拡張現実か……。なになに……、ほうほう……」
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