待ち人より。

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悲しみをこらえ、気丈にも涙は見せないけれど、身体は小刻みに震えてしまう。 それを抑えるようにして、本を拾い上げた。 ―――私を残して逝ってしまうなんて。なんて酷い人。 貴方の残した、この本。そして達筆な字で記された私への想い。 いつか、今度はあの人の元へと向かう時に、驚かせてあげましょう。 この本を解読して、澄まし顔で語ってあげましょう。 机の上の眼鏡とやらを耳にかけた。 ******** ――I want to spend the rest of my life with you.――   (残りの人生を、君と一緒に過ごしたい。) そして、彼の残した言葉の意味を理解したとき。 私は堪えきれない嗚咽と胸苦しさと共に、大粒の涙を零した。 ――Ditto.――   (私もよ。) そして今夜も、貴方を想って眠りにつく。
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