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「人形らしいデフォルメはありますけどね」と、蘭さん。
そう。そこのとこ。デフォルメのかげんが、すごく微妙なバランスで成り立ってる。
どの子の顔にも個性があって、一体ずつ違う。
「この子たち、一体ずつに人間のモデルがいるってこと?」
三村くんは、うなずいた。
「モデルの写真、見ると、よう似てんで。ほんで、モデルが死ぬやろ。あの人の人形はモデルの魂、吸いとるらしいって、ウワサになってんや」
やなウワサだなあ。
「でも、モデルが死んだと言っても、ぐうぜんでしょう? 世の中には若くして死ぬ人だっている」
蘭さんは残念そうに言った。
ほんとは悪魔に存在してほしいんだろうな。
が、三村くんは、あいかわらず神妙な顔をくずさない。
「はっきり言えるだけで二人、死んどるんや。二人とも蛭間さんの彼女やで」
あっ、うっ……二人とも作家に、きわめて近い存在か。
そうなると、ただのぐうぜんというより、なにかしらの、よからぬ力を感じる。
悪魔……とか?
僕は、こわごわ聞いてみた。
「それって、ほんとに死んでるの? おもしろがって、ネットなんかで広がったデマなんじゃ?」
三村くんは首をふる。
「それが、ほんまなんや。蛭間さんがイギリス行ったんは、そのせいや。傷心旅行っちゅうわけやな。
ほんで、いっきにウワサ、ひろまった。悪魔に魂、売ったんやって」
ぞぞォッ。怖いよ。魂を吸う人形。呪い。悪魔……。
僕はビクビクなのに、蘭さんの嬉しそうなこと。
「いいですね! 呪いのウワサのある人形作家。次々に死にゆく美女は、ぐうぜんか? あるいは悪魔の所業? 会ってみたいなあ。その人」
ああ、また、そういうことに首をつっこむ……。
「やめたほうがいいんじゃない? ほら、蘭さん、しつこいって、さっき言ってた」
「ストーカーじゃないなら、いいんです。モデルになるかどうかは別として。会ってみるくらいはいいかな」
ダメだ。蘭さんは好物のホラー話に目がくらんでる。
聞く耳持ってくれる、ふんいきじゃない。
また、三村くんが、のせるしさ。
「ほな、これから行こか。案内したるで」
「行きましょう」
三村くんが、内心、ガッツポーズとるのが、目に見えるようだ。
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