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「ほな、蘭、つれてかえりますわ。つれてきたん、おれやし」
蛭間さんの不審そうな顔。
状況が飲みこめてないな。
「おれら、マブダチなんすよ。な? 蘭」
「まあ、そうですね。猛さんほど絶対的な安心感はありませんが。頼れる友人の一人ではあります」
「猛とくらべんなや。こいつ、柔道三段やで」
兄ちゃん自慢は言わずにはいられない!
「剣道も三段だよ。昇段審査、受けるの、めんどくさがってるだけで、ほんとの実力は、もっと上だと思う。空手も達人ね。高校のときクラブでやってただけだけど」
今度は、蛭間さんが苦笑した。
「仲がいいんだな。とにかく、どうぞ、入ってください。
蘭さん、以前、あなたをテレビで見たときから、あこがれていました」
蘭さんは、ストーカー事件の被害者として、何度もニュースになってるからねえ。
それで、蛭間さんは蘭さんを知ってたのか。
「では、お言葉に甘えて」
蘭さんが蛭間さんに手をとられて、中へ入る。
というか、この人、蘭さんの手、つかんだまま離さない。
逃げられる気がするのかも。
続いて、僕らも。
こうして、僕らは呪われた人形作家の屋敷に迎え入れられた。
これが、いまわしい殺人事件の幕開けとも知らず……。
ほんとにねえ……なんで、いつも……。
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