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でも、人形を見て胸がドキュンッてなったのは、オバケ屋敷以外では初めてだ。
「これ、ヤバイよ!」
「せやろォ」
それは、とんでもない美少女の人形だ。
パッチリ二重の西洋人の子どもみたい。
白い肌に、ほんのりピンクのほお。
どう見ても、ソフビかなんかでできてるんだけど、乳白色の色合いが、まるで人肌。
くるんと上向きのまつげは、たぶん市販のツケまつげなんだろうなあ。
「カワイイなあ。こんな子いたら、さらうよね。美少女」
「美少年だろ。だって、これ、蘭だ」
あ、そうか。よく見れば、なるほど。蘭さん。
僕らは声をそろえて笑った。
「そっかあ。そりゃ、さらわれるよねえ。可愛すぎィ」
「ガラスに入れて、かざっとくよなあ」
笑いあってると、二階からトントンと、階段をおりてくる足音。
「なに、さわいでるんですか? 目がさめちゃいましたよ」
アクビをしながら、ろうかを歩いてくる蘭さん。
僕らは人形と実物を見くらべた。
おおっ、さすがは本物だ。
たとえアクビ中でも、寝グセついてても、パジャマ姿でも麗しい。
三村くんは、深く、ため息をついた。
「あかんなあ。ええ出来やと思てんけどなあ。やっぱ、モノホンには、かなんわ」
うーん、たしかに、じゃっかん、見劣りするかな?
土台、蘭さんを再現するなんて、ムチャだって。
うちの猛も、そうとうのイケメンだ。が、蘭さんは、そういうんじゃない。
もうね。絶世の美青年。
こんなに綺麗な人、この世に存在してもいいのかって思うよね。
おかげで、蘭さんは子どものころから数々のストーカー被害にあってきた。変質者にさらわれそうになったり。硫酸あびせられそうになったり。
僕らと暮らしてるのは、友だちだからってのもある。けど、それ以上にボディーガードが必要だからだ。
「あ、なんですか! それ」
蘭さんは僕らの手元を見て察した。
僕は猛人形、猛は僕人形、三村くんは蘭さん人形、にぎってるしね。
「なんで僕だけ、そんな変な服、きせられてるんですか? こんなの露出狂でしょう」
蘭さんだって、いつも変な服、きてるくせにぃ。
と思うのだが、僕らは誰も何も言わない。それについては、のちほど、くわしく。
たしかに、蘭さんドールだけ、レース編みのすけすけのやつをきせられていた。
それがまた人形の白い肌にあいまって、なんか、エロい。似合ってるなあ。
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