第1章

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「…ただいまー」 返事が返って来ない事は分かりきっているのに、実家にいた頃の癖が抜けず、俺の挨拶は空中に浮いて、静かに消えていく。 入社2年目になり、現在は8月。 今日は、俺の初めての企画書がお蔵入りになった記念すべき日だ。 俺は、某飲食店に勤めている。と言っても、店舗にいるわけではなく、本社の企画開発部に所属している。企画開発部とは、各店舗を監査し店の向上を図る営業監査部とは異なり、会社の新たな部門を切り開くために置かれた、新しい部署である。 現在、俺の会社はファミレスの運営を行っているが、また異なる飲食店の部門を展開しようと、今年4月から営業監査部と企画開発部の2部門に分かれてスタートしたばかりである。 俺は食べることが大好きだか、料理はまるで才能がない。 それでも、食に携わる仕事がしたいと就活した結果、めでたくこの会社に拾って貰った。 1年間営業の先輩と一緒に様々な店舗に出向き、色々な情報を見てきた。 料理に関しては全く役に立たないものの、いい環境で食事を楽しみたい、そんな環境を整えたい、と言う思いは誰よりも強かった。 その思いから、新しく創設されると聞いた企画開発部に自ら志願して、新年度から異動となり、現在に至るのである。
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