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「…ごめんなさい。秀基さんからいい常連さんがいるって聞いてたから、そう呼んでたんです。どんな方なのか会えるのが楽しみだったのでつい…。」
尚ちゃんと呼ばれた女の子は、親父さんの声を聞いた後恥ずかしそうに頬を赤らめて言った。
「あはは。親父さん変な紹介してんだなぁ。ま、気にしないで大丈夫だよ。尚ちゃんは、いつからバイトしてるの?」
「4月からです。大学入学と合わせて始めたので…」
「なるほどね、初めて見たからさ。って事は一年生?」
「はい」
「じゃあ、これから毎週来るからさ!これからよろしくね、尚ちゃん」
「こちらこそ、よろしくお願いします!」
尚ちゃんは、俺に向かって深々と頭を下げた。そして、嬉しそうに水道の前に立って洗い物を再開する。
素直で可愛らしい子だ。
「親父さん、バイト雇ったの初めてだよね?」
「あぁ、お陰様で客も増えてきたしな!若い力を借りようかと思ってな」
確かに、通い始めた頃に比べたら店内は賑やかだ。
しかし、閉店間際ということもあり、流石に店内の客足は疎らだ。
「親父さん、閉店だよね。食べたら急いで出るから」
「なーに言ってんだよ。お前は特別な常連さんだろうが。久々だし、ちょっと一杯飲もうぜ」
「…ありがとうございます」
親父さんはそういうと、暖簾を下げに向かった。
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