第1章

8/14
前へ
/36ページ
次へ
「あ、気にしないでくださいね。もう4ヶ月経ってるから平気だし。だから親父さんに報告がてら来たんだから。仕事も忙しかったけど、ひと段落したし、またちょくちょく来させて下さいね」 明るく振る舞う俺を見て、親父さんはにっこり笑った。 「そっかそっか。残念だけど男女は色々だわな!ま、今日はとことん飲もうぜ!」 そう言って、俺にビールを注いでくれる。親父さんのこの明るさに救われる。 今日来て良かった。 「あ、尚ちゃん、今日勇は?」 親父さんは、尚ちゃんに向かって尋ねる。 「今から来てくれるみたいなので、それまで秀基さん達と飲んでても良いですか?」 「おう、もちろん!一人で帰るにはもう危ねえからな」 そう言って、親父さんはコップのビールを一気に飲み干した。 「…勇くんって、尚ちゃんのカレシ?」 俺が疑問をぶつけると、二人して飲み物を吹き出した。 「…?」 しばらく苦しそうにしていた2人だが、 やがて落ち着きだした頃、親父さんが答えた。 「勇は、尚ちゃんの同い年の兄だよ。ちなみに尚ちゃんと交代でウチの店でバイトしてんだ。」 「同い年?双子なの?」 「いや、双子じゃないんです。ウチ、両親が再婚同士で、父の連れ子が私、母の連れ子が勇ちゃんで。同い年の兄妹になったんですよ。」 「…そうなんだ、何かごめんね」 込み入った話になってしまい、申し訳なくなった。 「気にしないでください。私たち家族は、本当の家族の様に仲良しなんで。ただ、勇ちゃんは妹離れ出来なくて、過保護なんですよ。本当、先が思いやられます…」 そう言って笑う尚ちゃんは、弟を心配する姉の様に、優しい顔をしていた。 他人同士が兄妹になっていても、とても良い家族になっているのだと、尚ちゃんの表情を見れば判る。 血が繋がっていても、家族と良好な関係を築けているのか、俺自身に置き換えると疑問である。 その時。 ーーーーガラガラッ 「こんばんはー!秀基さーん、尚います?」 店の入り口が開き、男の子が入ってきた。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加