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「あ、気にしないでくださいね。もう4ヶ月経ってるから平気だし。だから親父さんに報告がてら来たんだから。仕事も忙しかったけど、ひと段落したし、またちょくちょく来させて下さいね」
明るく振る舞う俺を見て、親父さんはにっこり笑った。
「そっかそっか。残念だけど男女は色々だわな!ま、今日はとことん飲もうぜ!」
そう言って、俺にビールを注いでくれる。親父さんのこの明るさに救われる。
今日来て良かった。
「あ、尚ちゃん、今日勇は?」
親父さんは、尚ちゃんに向かって尋ねる。
「今から来てくれるみたいなので、それまで秀基さん達と飲んでても良いですか?」
「おう、もちろん!一人で帰るにはもう危ねえからな」
そう言って、親父さんはコップのビールを一気に飲み干した。
「…勇くんって、尚ちゃんのカレシ?」
俺が疑問をぶつけると、二人して飲み物を吹き出した。
「…?」
しばらく苦しそうにしていた2人だが、
やがて落ち着きだした頃、親父さんが答えた。
「勇は、尚ちゃんの同い年の兄だよ。ちなみに尚ちゃんと交代でウチの店でバイトしてんだ。」
「同い年?双子なの?」
「いや、双子じゃないんです。ウチ、両親が再婚同士で、父の連れ子が私、母の連れ子が勇ちゃんで。同い年の兄妹になったんですよ。」
「…そうなんだ、何かごめんね」
込み入った話になってしまい、申し訳なくなった。
「気にしないでください。私たち家族は、本当の家族の様に仲良しなんで。ただ、勇ちゃんは妹離れ出来なくて、過保護なんですよ。本当、先が思いやられます…」
そう言って笑う尚ちゃんは、弟を心配する姉の様に、優しい顔をしていた。
他人同士が兄妹になっていても、とても良い家族になっているのだと、尚ちゃんの表情を見れば判る。
血が繋がっていても、家族と良好な関係を築けているのか、俺自身に置き換えると疑問である。
その時。
ーーーーガラガラッ
「こんばんはー!秀基さーん、尚います?」
店の入り口が開き、男の子が入ってきた。
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