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勇くんはペコリと頭を下げた。
礼儀正しいそのお辞儀は、とても気持ちの良いものだった。
「今度勇くんも一緒に飲もうな。…って言っても未成年だけどさ、俺に付き合ってよ」
「僕こそ、喜んで!」
笑顔でそう言う勇くんも、とても可愛い顔立ちをしていた。
男の子にそう言うのもおかしいかもしれないが、顔立ちが違う兄妹の笑った雰囲気は、どこか似ていた。
「じゃあ、尚帰るよ」
「うん」
そう言われた尚ちゃんは、コップを片付けて荷物を持ってくる。
「じゃあ、失礼します。和樹さんも、また」
「失礼します」
「2人とも気を付けろよー」
「「はい」」
2人が出て行こうとしたその時。
ーーーーガラガラッ
再び店の入り口が開いた。
「…勇、お前また忘れ物してんぞ」
「久志…それ」
「ったく、抜けてんだから」
久志と呼ばれた男の子は、勇くんに向けてプラプラと黒い財布をかざす。
「悪いな」
そう言って、勇くんは財布を受け取る。
「ごめんね久志くん、勇ちゃんいつもそうなんだから。おっちょこちょい…」
「いえいえ、いつものことだし」
「うっせー2人とも」
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