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そんな3人を見ながら、自分の学生時代を思い出し、懐かしく思えた。
「お!久志!勇のお守りか?」
「秀基さん、こんばんは。いつも2人がお世話になってます」
「また勇と食べに来いよー!」
「はい、よろしくお願いします」
親父さんとも知り合いの様子で話す久志くんは、ふと俺の方を見た。
「この方は…?」
「あ、俺は五十嵐和樹。ここの常連。たまに会うこともあるだろうから、よろしくな、久志くん」
「もしかして、2人が言ってた日替わりお兄さんですか?」
「うん、そうみたい。」
流石に3人目となると、そのあだ名も気にならなくなった。
「会えて嬉しいです!どんな方かなぁって思ってたんで!是非お話したい所ですが、今日は難しいですね。また是非!」
「おう、楽しみにしてる」
話ながら、久志くんはハッと何かを思い出す。
「悪い勇。部長にバレた。俺たちの事。あと、この美味い定食屋も。知られないように頑張ったんだけどな。あの人には逆らえねぇわ」
「…ってことは」
「うん、付いて来ちゃったよ」
「はぁ…もう観念するか。僕らが蒔いた種だし」
3人がグッタリ肩を落としているのをみながら、俺と親父さんは顔を見合わせた。
すると、
「おい久志ー!いつまで待たせんだよ」
入り口の向こうから声がする。
どこかで聞いたことのある声に、俺はギクリとした。
おい、まさか…そんなことがあってたまるか。
「…部長、静かにして下さい。何時だと思ってんですか。あと、終電なくなりますよ?俺たちは地元だから良いですけど、帰らないんですか?」
久志くんはゆっくり入り口を開けて、そいつに話しかける。
そいつは、面白そうに笑いながら言った。
「大丈夫だぁって!兄貴がこの辺住んでるから泊めてもらうし!」
「…誰も泊めるなんて言ってねえぞ」
あまりに低い俺の声に、親父さんを始め、他の3人も目を丸くしてこちらを見ている。
「…兄貴じゃん?!何でここにいるの?!」
「え、じゃあ部長のお兄さんって…」
あぁ、今日はとことんついてねぇ。
「そ、この人」
俺を指差していて、3人から部長と呼ばれた人物こそ。
ーー五十嵐涼太、大学3年生。
俺の弟であり、今最も会いたくない人物だ。
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