第2章

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細かな揺れと振動を感じ、心地良さを覚える。 俺は気持ち良く眠っていた。 「マズいですよ…後で怒られませんか?」 「いや先輩、怒られるどころか殴られますよ」 「お前らも同罪だからな」 「いや!涼太先輩が脅したくせに!」 「僕らは和樹さんと敵対したくないのに!」 浅い眠りの中、ざわざわと周りの話し声が聞こえる。 声に導かれるように薄っすら目を覚ますと、俺は驚愕した。 思わず目を見開き、周囲を見渡す。 「…おい、涼太…」 「あ、おはよう!兄貴」 「『おはよう』じゃねぇよ!ふざけんな!」 何故か俺は、車で何処かに運ばれているらしい。 これ、れっきとした拉致じゃねぇか。 「で?この状況は何なの」 俺は、5人乗り乗用車の後部座席の真ん中に座らされている。 俺の右には涼太、左には尚ちゃん。 運転席には久志くん、助手席には勇くん。 俺の周りは囲まれていた。 「兄貴さ、昔から一度寝たらなかなか起きないからなぁ。本当気をつけた方が良いぜ」 「何で寝てる時に気を引き締める必要があるんだ」 「わかってないなー」 一番解らないのは、この状況だよ馬鹿弟め。 「尚ちゃん達、何か涼太が巻き込んだみたいでゴメンな」 「私たちこそ、断れなくてすみません…」 馬鹿は無視して、巻き込まれたであろう3人に声を掛けた。 尚ちゃんは、俯きながら申し訳なさそうにしている。 「俺、何で乗せられてるの?」 「今から大事な所に行くんだよ」 「お前には聞いてねぇよ」 「兄貴ヒドいっ!」 両手で顔を覆い、泣く真似をする涼太。 俺からすれば、ヒドいのはお前だよこの野郎。 「これから合宿なんですよ」 「何の?」 「天体観測サークルの」 勇くんも、俺にすまなそうな顔を向けながら答える。 「涼太、俺は行かないって言わなかったか?!」 「だって、元部長だから来てもらいたくて」 「それは事実だが、嫌だって言ったろ」 「でも、やっぱりOBOGくるから」 だから嫌なんだよ!! まあ、涼太は俺が嫌がる本当の理由が知らないから、強行突破してきたのだろうが。 …強行突破と言えば。 「お前、どうやって俺の部屋入ったんだよ。鍵かけてただろうが」 一番の疑問点をぶつける。 もちろん、咲子が出て行ってからは誰にも合鍵なんか渡していない。 「ん?合鍵作ったよ」 「は?いつ?」 「久々に家に入れてもらった日」
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