第2章

3/12
前へ
/36ページ
次へ
「…はい?!」 そんな前から俺の部屋に入る手立てを考えていたとは。 こいつ、油断ならないな畜生。 「合鍵使用の記念すべき1回目はこんな形になっちゃったから、次回は正々堂々と使うよ」 「いや、2度と使わなくていい」 「えーひどーい」 「うっせぇな。鍵寄越せ」 右手を差し出そうとして、違和感を覚える。 手を動かすたびに、チャラチャラと音が聞こえる。 「…何これ」 「ん?手錠」 「そんな事は解ってる。そうじゃねぇよ」 「何か問題?」 「いや、問題しかないだろ」 ため息を漏らし、自分に繋がれた手錠を眺める。 「だって兄貴、逃げるだろうからさ。合宿付き合ってもらう為には俺、必死なの」 「これ、誰の?」 「もちろん俺の」 「…」 「他にも色々とあるよー。今度見せるね」 「いや、結構です」 俺の弟は、素敵な趣味をお持ちで御座いますな。 本当に行きたくない。 嫌だー嫌だー! そんな気持ちでいっぱいな俺は、盛大にため息を吐いた。 「何でそんなに行きたくないの?」 「何でって…」 涼太に理由を説明するのは、全く気が進まない。 「俺の先輩たち、兄貴にめっちゃ会いたがってんのに」 「あいつらには俺も会いたいよ」 「じゃあ何でよ。納得出来ない」 「…お前もしつこいなぁ」 涼太は、納得出来ない事に対しては、気がすむまで突き詰めていく傾向にある。 こりゃ面倒だな。 「簡潔に言うと、元カノとその今カレがくるかも知れないから。女々しいが、その2人を並んで見るのはまだ無理」 細かな所は省き、ザックリと概要を伝える。 決して間違いではない。 詳しく言ってないだけで。 と言うか、詳しくなんか言えるかよ。 「…もしかして、『なかや』に一緒に来てたっていう女性ですか?」 勇くんが控え目に俺に問いかける。 「親父さんに聞いたの?」 「…すいません。秀基さん、お二人がお似合いで気に入ってたみたいで、結構話を聞いていたんです」 「それは、秀基さんにも悪かったな…」 「本当、秀基さんが気に入ってただけなので、気にしないで下さいね!」 尚ちゃんにまでフォローをさせてしまった。 やはり、あまり言うべき事ではない。 何か皆に気を使わせてるな、俺。 「…ッチ」 隣の涼太が突然舌打ちをした。 「兄貴」 「…何?」 「同じサークルだったなんて、聞いてない」 「いや、普通言わねえし」
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加