幼き君と

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少女はポケットからきれいな緑色の勾玉の着いた紐を取り出し、ワンコの首に掛けてやった。 「これはね、お守りなの。きっとワンコの事も守ってくれるよ」 そう言って華はワンコを抱きしめた。 ワンコにとっては、初めての人間なのだが、華の事はちっとも怖く感じなかった。 気持ち良さげに身を任せていると、華が突然、立ち上がる。 「あっ、大変。早く帰らないとママに怒られちゃう。ワンコちゃん、華ね、今は狭いお家だからダメだけど、おっきいお家に行ったらきっと飼ってあげるからね、待ってて」 ワンコに手を振りながら、そう言い残して華は走って行った。 そこに残されたワンコの頭に、華が言った言葉が反芻される。 (飼う?飼ってくれるの?本当だね?ぼく、待ってるから、約束だよ) ワンコは何とも言えない幸せそうな表情で、駆けてゆく少女の後ろ姿を、いつまでもいつまでも眺めていた。
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