幼き君と

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幼き君と

新しい靴を買ってもらった華(はな)は嬉しくて堪らずに、母親の言いつけを破って1人お散歩に出かけていた。 「大丈夫、大丈夫。幼稚園に行くまでの道は華ぜーんぶ知ってるもん」 そんな言い訳をしながら歩いているところが、とても素直で愛くるしい。 歳は3つくらいだろうか、おかっぱ頭で瞳がくりくりとした可愛いらしい少女だ。 きっと将来は美人さんになるだろう。 華はいつもの通りに公園の横を通り、いつもの通りに蓮華草が咲く小道を抜けるはずだった。 が、そこにはいつもは居ないものが居た。 「あっ、ワンコ」 少女にワンコと呼ばれたものは、突然の大声にびっくりして、駆けだして行ってしまった。 小道の脇を抜け、舗装されてないあぜ道を走り、空き家の雑草の隅でようやく安心して、ワンコはうずくまる。 (はぁ、びっくりした。まさか人間に会うなんて……) ワンコは今日やっと人里に下りる事を許されたばかりだった。 ドキドキした胸が収まるまでここに隠れていよう、そう思った瞬間、少女の泣きじゃくる声が聞こえてきた。
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