だってしょうがない。(1)

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 俺は女の子にうんざりし、何も期待しなくなった。  出来なくなった。  そうなった切欠はどこだったのか? 色んな積み重ね。だけど決定的なことが起きたのは、浅生(あそう)サキという女と付き合ったからだった。  俺が最後に付き合った異性──になると思う。  相手に期待しなくなり、それでも付き合い続けることは、苦痛以外の何者でもない。そうなると身動きが取れなくなった。他の出逢いに思いを馳せ、それでもまだ惰性で付き合い続ける馬鹿げた関係。  サキには、俺が、そう決断した経緯も、その理由も、本当の意味では、きっと一生理解は出来ない。  誰かにその不幸を訴え、嘆き、自分がどれほど可哀相な人間であり、一体、誰がそのような酷い仕打ちをしたのか吹聴する。  俺は、今はもう、それでも構わないと思っている。  また始めから出会い直すなんてことも出来ない。それよりも俺の方でそれを望んでいない。  もし、ありのままの彼女を受け入れてくれ、彼女が一切不平不満を漏らさないだけの幸せを与えてやれる男が居たら。それはこの上なく幸運な出来事だろうと、今の俺なら心から祝福を贈れる。  どうやら最近考えることはあいつのことばかり。サキではない──異性?  妄想、きちがい、空想家、頭がおかしい奴。なんとでも呼んでくれよ。  それ以前も「もしかすると?」  そう思うことはあった。  ただ、本格的に俺が自覚する切欠となったのは紛れも無く伊達の存在だろう。  そしてそれを決定付けたのは。  サキ。
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