だってしょうがない。(1)

4/4
21人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
 自分がノーマルではないのではないか? その疑問が湧き上がった時、物心付いた頃から順繰りに色々と考えてみた。  小学時代はそうでもなかった……。  いや元々その()は無かったように思う。  仮に母親の化粧道具──例えばアイラインを普通の鉛筆とどう違うんだろう? 瞼に黒く塗る物──試してみようかな?  口紅。女の人はどんな風にこれをつけるんだろう。そして”どんな気分になるんだろう?”  そんな好奇心から一度は母親のメイク道具を、試しにつけてみたと思ったことのある男子は少なからず居るだろう。  実際にやらないまでも、その衝動に駆られたことがある、という者も入れると結構な人数が居ると思う。  もちろん、だから即、同性愛者。つまり男の方が好きだと言うつもりは無い。  この時点ではただの好奇心だ。自分(男)が本来絶対に使わない物を、一度くらいは試してみたい。ただそれだけの意味でしかない。俺もその程度のものだった。  中学時代──。  小学生の頃よりも大人になり、男は個人差によっては脛毛がそろそろ生えだしている者もいる。三年生にはそういう者も数人見かけた。早いと下の毛や、脇も少しだけ生え出す男子も出てくる。  そして女子は丸み帯びて今まで膨らんでいなかった胸が、大人の女の人のような”おっぱい”になり始めた。  その頃、男子も成長期で乳首がコリコリするようになる。強めに触ると痛い。男子でもこれは必ず通る道だ。  俺の場合はその時期が長くて内心では「もしかするとこのまま膨らんでしまうんじゃないか!?」と焦り、ずっと落ち込んでいた。事実、俺の場合は人よりも膨らんでいたように思う。  その成長過程の変化も落ち着いてきだした頃、妙に女っぽいクラスメイトの男子が居て、気にはなりだした。  もし男子を少しばかり女子のような目で見たことがあるとすれば、正直に告白するとその頃、中学時代のそのクラスメイトの男子には多少興味がそそられた。  それでも好きだとか、本格的に付き合いたいなどの気持ちは無かった。折角成長しだした女子が教室に入るとそこら中に居るのに、敢えて男に走るのは馬鹿みたいなことに思えた。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!