第一章 始まりの日

4/20
前へ
/531ページ
次へ
目の前に現れたアーマードから降りたパイロットによって、僕は救助された その人は一見すると女性に見間違える程の美しさだが、テレビで何度も見た事のある人物で、《竜の騎士団》の指揮官だという事を知っている 彼は僕の怪我の様子を見て、一瞬だけ表情を固くしたけど、直ぐに仲間の軍医を呼んだ その軍医が到着するまでの間、僕は彼と言葉を交わしていた 「僕は、助かったの……?」 「そうだ。テロリストは俺達が倒した。君はもう安全だ」 「父さんも母さんも、死んじゃったのに……僕だけが、生き延びて…………そんなのって、あんまりだよ……」 安堵したからか、今まで流していなかった涙が止めどなく溢れてくる 「自分が死んだ方が良かったか?」 彼の言葉に、僕は頷いた 「今でもまだ死にたいと思っているのか?」 彼の言葉に、僕はもう一度頷いた 「だが生きろ。生きて、そしてこの惨劇を繰り返さない為の努力をしろ。その為には復讐を生きる糧にしても良い。まずは自分が生き延びるんだ」 僕は彼に死にたいと願った、でも彼は生きろという 「何で……?」 「それが死んでいった人達への、一番の手向けになる。生き延びた幸運に感謝して、それでも亡くなった人達の無念を忘れるな。彼等の為にも、今日の出来事を決して忘れてはならないんだ」 「……僕も、貴方のように強くなれますか?」 「努力さえ怠らなければ、いつかはなれるだろう。だが、何の為に強くなる?」 「今の貴方のように、僕も強くなって誰かを守れる人になりたい……同じ事を、他の人達に経験させたくない……」 「その事を忘れなければ、必ずなれる。だから生きろ。生きる事を諦めるな」 「はい…………僕は、貴方のように………………貴方の、隣に……」 これが僕と彼の、英雄との出会いだった 『ーー間も無く、本線はザナルエイブへと到着致します。滞在時間は二十四時間です。お降りの際は、お忘れ物の無いようにお願い致します』 それから十年後、十九歳になった僕は、この街、ザナルエイブへと降り立った あの人に向かって言った言葉、僕の夢を叶える為には、この街が一番の近道だと思ったからだ そして、今日から此処が僕の仕事場で、日本、ドイツに続いて第三の故郷になるんだ
/531ページ

最初のコメントを投稿しよう!

291人が本棚に入れています
本棚に追加