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目の前に現れたアーマードから降りたパイロットによって、僕は救助された
その人は一見すると女性に見間違える程の美しさだが、テレビで何度も見た事のある人物で、《竜の騎士団》の指揮官だという事を知っている
彼は僕の怪我の様子を見て、一瞬だけ表情を固くしたけど、直ぐに仲間の軍医を呼んだ
その軍医が到着するまでの間、僕は彼と言葉を交わしていた
「僕は、助かったの……?」
「そうだ。テロリストは俺達が倒した。君はもう安全だ」
「父さんも母さんも、死んじゃったのに……僕だけが、生き延びて…………そんなのって、あんまりだよ……」
安堵したからか、今まで流していなかった涙が止めどなく溢れてくる
「自分が死んだ方が良かったか?」
彼の言葉に、僕は頷いた
「今でもまだ死にたいと思っているのか?」
彼の言葉に、僕はもう一度頷いた
「だが生きろ。生きて、そしてこの惨劇を繰り返さない為の努力をしろ。その為には復讐を生きる糧にしても良い。まずは自分が生き延びるんだ」
僕は彼に死にたいと願った、でも彼は生きろという
「何で……?」
「それが死んでいった人達への、一番の手向けになる。生き延びた幸運に感謝して、それでも亡くなった人達の無念を忘れるな。彼等の為にも、今日の出来事を決して忘れてはならないんだ」
「……僕も、貴方のように強くなれますか?」
「努力さえ怠らなければ、いつかはなれるだろう。だが、何の為に強くなる?」
「今の貴方のように、僕も強くなって誰かを守れる人になりたい……同じ事を、他の人達に経験させたくない……」
「その事を忘れなければ、必ずなれる。だから生きろ。生きる事を諦めるな」
「はい…………僕は、貴方のように………………貴方の、隣に……」
これが僕と彼の、英雄との出会いだった
『ーー間も無く、本線はザナルエイブへと到着致します。滞在時間は二十四時間です。お降りの際は、お忘れ物の無いようにお願い致します』
それから十年後、十九歳になった僕は、この街、ザナルエイブへと降り立った
あの人に向かって言った言葉、僕の夢を叶える為には、この街が一番の近道だと思ったからだ
そして、今日から此処が僕の仕事場で、日本、ドイツに続いて第三の故郷になるんだ
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