第一章 始まりの日

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「離せよ、これはオレが先に見付けた依頼だぞ」 「そうはいかないんだ。僕も、その依頼を受けようとしたんだからね」 「オレの方が依頼書に手を着けたのが少しだけ早かったもんね!」 「いいや、僕の方が早かったね!」 掲示板から外した依頼書をお互いに破いてしまわない程度の力で掴んでいるんだけど、譲る気は全く無く、睨み合う 装備は上でも、力量まで上とは限らない これでも僕は強くなる為にトレーニングを続けてきたし、武器の扱いも幾度と無く練習した 両親が亡くなった後に僕を引き取ってくれた叔父夫婦の居る第二の故郷ドイツの地元でも少々田舎だったとはいえ一番の強さだから、それなりの自負はある 「どうしても退かないか?」 「当然だね。こっちだって生活が掛かってるんだ」 「お前もハンターだ。なら、やるか?」 「こっちとしてはどちらでも構わないよ?」 向こうが《ロキ》に手を掛けた事で、僕も両腰にある武器に手を伸ばす 右腰のホルスターに納まっているのがトワイライト社製のレーザーハンドガン、TWHG-2019《タイタン》で、左腰もこれまたトワイライト社製のレーザーソード、TWSW-2019《フブキ》だ トワイライト社の武器は、全てエネルギーパックを使ってのレーザー系武器だけど、今ではレーザー系の武器が各国の軍や警察での正式装備として採用される事が多い 僕の持つこの二つの武器は、予算の都合でトワイライト社の初期も初期の製品だけど、それでも今でも第一線で通用するだけの性能はある それに此処は屋内で、しかも相手との距離はかなり近い、装備を考慮すれば僕の方が圧倒的に有利だ でも、僕は此処で一つだけ大きな失敗をしていた、両手を武器に伸ばしたら依頼書は片手だけ《ロキ》に伸ばした向こうが持ってるに決まってるじゃないか 「お前バカだろ!ヤッフゥー!この依頼オレが戴き!」 「あっ!?待てよこの野郎!」 笑顔で依頼書を受注の為にカウンターに持っていく彼を、僕は必死で追い掛けた でも次の瞬間、此処ハンターギルドの入り口の方が突如として爆発、ギルドの建物正面に大きな穴が空いた 「うおっ!?何だ!?」 「隙あり!」 「ああっ!?テメェ卑怯だぞ!」 彼がその爆発に気を取られている間に、僕は依頼書をその手から取った 状況把握は、その後でも良いんだよ、だって此処はハンターギルドだからね
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