第一章 始まりの日

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「ああぁぁぁぁぁ!?」 あまりの痛みに一瞬だけ意識が飛び、僕は地面に倒れ伏す 敵は全ての脅威を排除したからか、武器を納めると積み荷を積んだ車の荷台を開けて、そこに納められたアタッシュケースを持ってこの場を去ろうとする でも、その長い灰色のローブの裾を、僕が掴んだ 《右腕》で《ムラクモ》は受けたけど、右腕で受けたのは僕にとって幸いだ 右腕右足なら僕はまだ動ける、そして右足を動かして這い、車に凭れ掛かりながら必死に起き上がる事で、ようやく敵と同じ目線で立てた せめて、敵の顔を確認する事が出来れば後で犯人として追う事も出来る、例え口封じで僕が死んでも僕の《右眼》はその顔を焼き付けるだろう そして、僕は掴んでいたローブを相手から持てるだけの力で一気に引き剥がした どんな顔の相手か、僕の眼が捉えたのは少々予想外な相手だった ローブよりも綺麗な灰色の髪に、金色の瞳を持つ色白の美少女、それも絶世の美少女と呼べる、それが僕の見た敵の素顔だ 「女、の子……?」 「驚いたわね。貴方、何でまだ動けるの?バトルモードじゃないスタンモードでも、《ムラクモ》での一撃を受けたのよ?」 初めて喋った敵の、彼女の声はとても済んでいて綺麗な声だった 先程のあのような強さを見せた敵が、目の前の美少女と結び付かない でもこの子は敵だ、僕達の明確な敵なんだ 「ハンターとして、君を拘束する……僕は君の顔を見た、いずれ……追手が来るだろう…………観念、するんだ……」 「ハンター、ね。貴方、この荷物が何か知ってるの?」 「詳しくは知らない……でも、多くの人を幸せに出来る代物だと……」 「そうね。ある意味、一部の人間は幸せになれるは。でも、これを見てもまだ私を追う?」 ふらつく腕で《タイタン》を握り、彼女に突き付ける でも彼女はアタッシュケースを開くと、その中身を僕へと見せた そして、それを見て僕は思わず《タイタン》を手から取り落としてしまった 「そんな……これが、僕達の守っていた物だなんて…………」 「残念ながら、事実よ。ハンターギルドには、時として非合法な依頼が、非合法である事を伏せて依頼される事があるの。今回の貴方が、その件のようね」 アタッシュケースの中身、それは透明な袋に納められた、とても医療用とは思えない白い粉末状の物だった
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