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「只今戻りました!」
「おう、来たかエミル坊。もうちょっとでニコチンが切れてコイツをぶっ放すところだったぞ」
部屋に入った僕は彼女、マスターが肩に掛けた大型ライフルを撃つ前にタバコを渡す
お気に入りの銘柄らしいけど、それを一日に一箱吸うヘビースモーカーだから、一気に百箱程をまとめ買いしとけば暫くは安全になるらしい
らしい、というのは前までは自分で何かのついでに買うか、灰被姫の異名を持つ彼女、レーネが買ってきていたようなので、知らないのだ
僕とアレンがこの事務所に入って働くようになって二ヶ月、そのタバコの買い出しも僕等の雑用になった訳だ
「はいよ、ご苦労さん。釣りは貰って良いから、また頼むよ。それにしても、随分とボロボロだねぇ。またレーネにやられたのかい?」
「アハハ……まあ、聞かないで下さい」
下着を見てしばかれたとか、情けない理由過ぎて話したくもない
その気持ちを察してくれたのか、マスターはそれ以上は聞かずに、タバコを開けて吸い始める
机に腰掛けて足を組む姿はとても似合っていて、何処にも違和感は無い
マスターは褐色の肌に銀の髪を持つ人物だ
そして、一番の特徴は耳が尖った笹穂耳、俗に言うエルフ耳の持ち主だって事だ
そう、マスターの種族は人の生活する土地に現れるのは珍しいエルフ族の一つ、ダークエルフになる
雰囲気や外見の年齢は二十代後半の妖艶なお姉さん、といった感じだけど、エルフ族の年齢が外見と比例しない事は当然で、実際は二百歳を軽く超えてる筈だ
因みに名前は知らない、誰もがマスターと呼んでいるから、僕等もマスターと呼んでいる
「さて、一服したところで仕事の依頼だ。聞くかい?」
「はい」
仕事は嬉しい、何も無いで穀潰しとか言われたくないからだ
ただ、話も聞かずに返事した事を後悔するべきだった
「それじゃあギャング組織を一つ潰して来て。大丈夫大丈夫、装備をちゃんとしとけばエミル坊にアレン坊でも勝てる勝てる」
「それじゃあマスターやレーネは……」
「行かないよ。二人でやっといで。じゃあ、昼までに終わらせといで。無理だったら報酬は無しだから。それと拒否権も無いから」
「うわあぁぁぁ!アレン、行くよ!」
タダ働きなんて嫌だ!何が何でもやってやる!
これが僕のこの街での日常、仕事までの間、少しこの街に来た時の事を振り返っておこう
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