第一章 始まりの日

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熱い、何処を見渡しても火の海で、僕は何処を歩いているのかも分からなかった そもそも生きているのだろうか?ひょっとしたら僕は単に幻覚を見ていて、本当は地面に倒れて死に掛けているんじゃないだろうか? そこで何かにつまづいて転けた、あらゆる感覚が麻痺しそうな中、その転けた痛みで僕はまだ生きているのだと確信出来た ふと何につまづいたのか、見てみると、それは瓦礫の下敷きになって死んだ人の腕だった それを見ても僕は驚かない、今日だけで死体なんて嫌となる程に見たからだ そう、それこそ両親の死体だって、いや、あれは死体と呼べるのだろうか? 鉄の巨人、アーマードの持つ銃で撃たれて原形も留めずにバラバラになってしまった両親も、既に場所が分からないからどの肉片が両親だったのか、分からない 口数は少ないが、不器用ながらに僕に愛情を注いで育ててくれた父さんも、常に明るい笑顔で得意の料理を作ってくれた母さんも、もう居ない 何でこんな事になったんだったか、それはつい先程の事だった 《邂逅の日》と呼ばれる異世界との遭遇が起きたのはこの日から四年前、そして直ぐに異世界との戦争が始まった 魔力を持つ異能と、人類の戦争は果てない戦いになるかと思われたが、事態は時の流れが解決した 新生児の内、一割が異能として誕生するようになり、人権を求めての戦争も、新たな世代が異能となるのであれば、戦う理由が無いからだ 異能の数が増え、それを収容しても、全人口の一割を危険だからと隔離すれば、今度は新たな労働力が居なくなってしまう 故に二つの世界は和平を結び、異能が人類の発展に大きく貢献出来ると正しく理解すると、今度は異能を優遇し始めた それが開戦から三年後の事で、この日はその終戦一周年を記念しての式典が行われていた アメリカのクロスゲート周辺の会場で行われたこの式典は、しかし、後に人類史上最悪のテロ事件によって大混乱に包まれた 異能を認めない反異能勢力、異世界からの資源によって利益が落ちる事を恐れた資源輸出国によるテロは、警備として会場に居た米軍でも完全には止められず、会場内への侵入を許してしまった そして、あの惨劇が幕を開けたのだ
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