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「みんな何かあったの?」
首をかしげながら椅子に座る悠。
二人の姉は両手を握りしめ僅かに震えていた。
「春香(はるか)か桃和(とわ)のどちらか頼めないか?」
「無理に決まってるじゃない!」
「私達には婚約者がいるのよ!
いつ帰れるかもわからない怪しいところに行けるわけないじゃない!」
「しかし…」
「とりあえず私にも説明してよ…
姉さん逹も落ち着いて?」
母親にココアを入れてくれるように頼み、悠は父親の話に耳を傾ける。
要約すると父親の部下の不注意で相手の車を傷付け、修理費の代わりに娘を自分の家で働かせろと言うことらしい。
(美女と野獣みたいな展開だね…)
そんなことを考えながらココアをすする悠。
春香と桃和の二人は双子で年齢は25歳。
仕事にもついていて、春に婚約者もできた。
そんな中急にどこの誰かもわからない人物の家で働けと言われて了承するはずがない。
「このままでは…」
「姉さん達じゃなくて私が行けば良いんじゃない?」
その発言に家族全員が悠の顔を見る。
「だって春姉も桃和姉も無理なら私だけじゃん?
大学は休学すれば良いし私には二人みたいに婚約者もいないし…」
「よく言ってくれた! さすが私の娘だ!」
父親はそう言い悠を抱き締めると、携帯を持ち急ぎ足で部屋を出ていく。
心配そうに彼女を見る姉と母親。
「三人ともそんな顔しないでよ…
きっとなんとかなるよ…」
残ったココアを一気に飲み干すと笑顔を向ける。
それから話は順調に進み、大学にも休学届けをだし今に至る。
(軽く考えすぎたな…
まさかここまで次元が違うとは…)
窓の外はいつの間にか木が生い茂る森に姿を変え、さらに先へと進む。
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