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「緊張したぁ~」
見取り図を見て中庭に来た悠は声に出した。
葛葉は笑顔が多いが何を考えているかわからないのが悠には怖かった。
絶対に何かを企んでいる。
そんな笑顔だった。
気を取り直して中庭を眺める。
かなり綺麗に手入れされている。
真ん中には大きな噴水があり本当にここは日本なのか疑問に思えるくらい。
(部屋数も多すぎて覚えられないし)
見取り図を見た瞬間軽いめまいを覚えたのは言うまでもない。
客室、サロン、楽器部屋、小さなギャラリー、調度品室、書庫室が渡り廊下先の建物でぎっしり本が並んでいるのを見て静かに扉を閉めた。
部屋一つにしてもホテルの様な豪華さ。
3階の奥へ行く手前までも行ってみた。
境目にテーブルがあるだけで他は何も無かったが…
そして今は中庭でゆっくりしている。
(でも気難しい人見知り…
どんな人なんだろう…)
首をかしげながらふと3階の奥の廊下に面している窓を見た。
その部分だけ全ての窓が黒いカーテンで閉じられている。
しかし一枚分だけ少しめくれている。
何か引っ掛かってるのかと良く見ると目が合った。
黒いカーテンと同化するような黒い服らしきものからのぞく二つの瞳。
慌てて頭を下げる悠。
葛葉と自分以外にいるのはこの屋敷の主人。
挨拶はキチンとしなくては…
数秒後頭を上げるとそこには誰もいなくてしっかりカーテンが閉まっていた。
(気のせいではないよね?)
首をかしげつつ再度さっきの窓に頭を下げると見取り図を取り出し、自分の部屋へ戻るために前を向き歩き出した。
その歩く姿を見る視線に気づくことなく…
その日悠は言われたことを守りよる22時までには部屋に戻った。
明日の準備をし、今日あった事を思いながらベッドに横になる。
興奮して寝付けないのではと心配していたが柔らかなベッドに横になっている内に瞼が重くなりそして静かに眠りについた。
明日から始まる仕事の事を考えながら…
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