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「さっき、急に指揮してたけど、そんなに使いやすかった?」
職員室に鍵を返した後の帰り道で木下は色川にきいた。
「うん。なんかしっくりきた。軽くて持ちやすくて。あれで指揮したいなぁ」
「………」
「なんて、冗談だよ」
木下の無言に負けたのか色川はヘラヘラと笑う。
「いや、一回使ってみれば?」
「へ?」
色川は意外な木下のセリフに目を丸くし木下の顔を見る。
「さっきの色川君、楽しそうだった。あと、…いつもより、か、かっこよかったし……」
「ん?楽しそうだったのあとなんて言った?」
「な、何でもないよっ!」
木下は早口に言うと少し駆け出し、色川の少し前で振り返り
「音楽室の準備室にあったんだよ?それは使っていいってことだよ。それに、最後の大会だし自分の全力を出すためにも使いやすい指揮棒を使うのも良いと思うし」
満面の笑みで言った。色川は何度か瞬きをし
「ふっ。まさか木下がそう言うとはな」
吹き出すように笑ってから木下を見て
「そうだな。明日ちょっと使ってみようかな」
と笑った。
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