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「ストップっ!」
音楽室の端に座る少し丸い体型をした白髪の老人が声を張り上げると教室の真ん中で指揮棒を振っていた学ランの少年は指揮棒を宙で止める。それに伴い奏でていた音楽がまばらに止まった。
「お、音吹先生…どこか音が違いましたか?」
指揮者の学ランの少年は恐る恐る顧問の先生である白髪の老人、音吹へ視線を向ける。
演奏をしていた生徒達もどこが悪かったのかと疑問に思いながら音吹へと視線を移す。音吹は腕を組むと呆れた表情でため息をついて
「ズレておる」
と一言だけ言った。
「ズレていましたか?」
指揮者の少年は瞬きをする。その言葉を聞いた音吹ははぁとため息をつき重たい腰を上げ
「トランペット!特に木下!」
とトランペットを持つ女子、木下を指さした。木下はビクッと体を震わせ
「は、はい!」
と返事をした。
「今、慌てて音を出したろ!音が震えたおったぞ!」
「は、はいっ!すみません」
木下は図星だった為か 素直に謝った。
「色川はもっと演奏者の目を見て伝えろ!演奏している本人は楽譜なんか見てられないんだ。お前はその指揮棒と目で演奏者を導いてやれ!」
指揮者の少年、色川を指さし音吹は言った。色川は
「はい。気を付けます」
と申し訳なさそうに言うと木下を見て
「ご、ごめんね木下さん。」
と木下へ謝った。木下はトランペットを膝の上に置くと両手を胸の前で振り
「わ、私こそごめんね」
と謝った。
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