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「いいよ別に。皆を遅くまで残すわけにはいかないし」
色川は立ち上がらると
「戸締りは先生から任された僕の仕事だし、それに木下さんがいつも手伝ってくれてるし」
扉の横の壁にかけてある鍵を取ると楽器等をしまってる物置の鍵を手に持ち物置へと入った。
「楽器は全部しまってあるよね?」
「え?あ、うん!こっちには置いてないからしまってる…と思う」
物置にいる色川の声に音楽室で机を並び直してる木下はできる限り大きな声で返す。
「ありがとー!」
色川はまた声を張り上げ物置から出ようと振り返った時
「うわっ!」
何かに突っかかり転びそうになってしまった。
「だ、大丈夫?」
色川の声に驚いた木下は物置の入口から心配そうに顔をのぞかせる。
「うん。セーフだよ」
片足立で両手を広げまるで組体操の飛行機のような体勢で色川は答える。
「うん…セーフみたいだけど、ギリギリセーフっぽいね」
木下は苦笑いで言いながら物置の部屋の電気をつけ
「何があったの?」
と色川に近付いた。体勢を戻した色川は躓いたものが何かを確認しようとしゃがむ。
「何だろ、木箱?」
足元にあったのは古めかしい木箱だった。色川の頭上から覗きこもうとする木下は色川の肩に手をついた。
「ちょっ!?」
驚いた色川はグラリとバランスを崩した。
「あわっ!!?ご、ごめん!!」
慌てて色川から離れた木下は指先をチョンチョンと合わせながら
「な……何があったのか気になって…」
とゴニョゴニョと小声で言った。
「あ、まぁ、大丈夫なんだけどさ」
色川は顔を赤くしながら古めかしい木箱に視線を移し一瞬躊躇してから木箱を持ち上げ木下に見せた。
「これにつまずいたっぽい」
「??なにこれ…」
木下は色川の前にしゃがみ木下を凝視した。
「中に何かあるのかな?」
色川が言うと
「あ、開けて…みたら?」
と木下は提案した。色川は木箱を見てもう一度木下の顔を見てから長い瞬きをして
「よし」
と 木箱の蓋へと手を伸ばした。
「開けるよ?」
「うん。」
色川は何故だか緊張しながら箱の蓋を持ち上げる。
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