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そして貴女とお兄様の前にその敵が現れる可能性も高いのです。
もしかしたらお兄様は…
私は二日前にこのイェンセン城国に入って、
私達のネットワークで誰よりも早くお父様の訃報を聞きました。
だから一刻も早くこのイェンセンを出る事が、敵を出し抜くチャンスなのです!』
魔法でいっぱい喋るのはつかれるわ、と呟きながらサユの話は終わる。
サユの話の後、少し考えてからルコリーが言う。
「…学校公認だからって、貴女がその敵である可能性だってあるじゃない」
『…は?』
ルコリーの腕を掴んでいたサユの手の力が少し抜ける。
ぺちっ
ルコリーは左手でチョップを繰り出したが、サユの左手で止められる。
「ほら、貴女の目が見えないのも嘘なんでしょ!
白杖もその目隠しも私を油断させるための…」
『師匠の元で修行した成果です。
師匠はすごいんです。すごい師匠なんです。
私は目は見えないし、喋れないのも事実です。
話せないからこんな魔法が使えるように…』
サユが言い返していた途中で、ルコリーはサユの右手を振り払った。
「とにかく!!
何かあったとしても私は家の指示を待ちますわ。
お父様の指示でこの学校に来たのですもの、勝手にここを離れられませんわ!
お父様とお兄様に手紙を書いて指示が来るのを待ちます!」
言い放つと、ルコリーは足早に中庭から校舎へ入っていった。
鐘が鳴る。
どうやら午後の授業が始まる鐘のようだ。
ぐぅ~、とサユのお腹が鳴る。
私のお昼ごはんが…と心の中で呟いてうなだれた。
**************
夜空に輝く一筋の光「女神の涙」が、森の闇をさらに深くする。
その闇の中に隠れようとするように、数人の兵士の死体が転がる。
激しい剣戟の音が森の闇の中に響き渡る。
「ぐぎゃっ」
闇から光へ、兵士の首が転がり出る。
「ちょっと用があるけぇイェンセンにちょっと入るだけだべ。
それを邪魔しおってからに」
闇が意志を持ったように、光の方へ顔を出す。
それは闇ではない。
逞しい筋肉で肩が盛り上がり、太い腕を持つ黒い鎧を纏った男だった。
「んだべ、だが楽しみだなぁ、兄者!」
「何だべ、仕事しに行くだけじゃろ」
「若いオナゴがいっぺーおる所じゃろ。選び放題だべ!」
続いて、2人の黒い鎧が闇から顔を出す。
「おおそうじゃ、仕事と遊び両方楽しんだらええべ。
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