第03話 ~長考~

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 叔父様…遠い昔に一度会った事があるが、スマートで厳しいだけのお父様と違い、 小太りで優しそうでとても人を、ましてや実の兄を殺害するような方には見えなかった。  厳しいお父様。  家にいても私に近づこうともしなかったお父様。  ルコリーとは歳が離れていたお兄様をいつも連れて歩いて、 お兄様を厳しく叱り付けるお父様。  サユからお父様の死を聞いた時は驚いたが、それほど衝撃は受けなかった。  だが、お兄様が。 あの優しいお兄様が。  庭で一人で遊んでいると、忙しい時間の合間に一緒に遊んで下さったお兄様。  ご近所を歩けばご婦人方が、家にいればメイド達がいつも噂話になるほどのイケメンなお兄様。  頭が良くて15歳の時から、お父様に教わりながら仕事を補佐してきたお兄様。  3年前に執事からアイマリース女学院に行くように言われ、数えれば4年も会ってないお兄様が。  行方不明?まさかお父様と一緒の事に?  いつも持ち歩いているペンを無意識に玩び、考えるルコリー。  お父様や遺産の事はルコリーにとってはあまり関心がなかった。  しかしなんとなく、いつも着ない黒い下着にした。  少しでも喪に服す、という意味で。  黒い制服がない以上、ほんの気持ちだけでもというつもりで。  ただ、お兄様が無事だという知らせが、使者が来てほしかった。  いや、無事なら使者も何も来ないはずである。  馬車の音がする度に、複雑な思いでルコリーは正門を見る。 「ひっ」  突然、肩に手をかけられ飛び上がるルコリー。  2つの胸の膨らみも、大きく上下する。  全く人が来た気配が無かったのに。 『そこは私の席のはずですが』  右側に小さな三つ編みのある黒髪のボブ、 目隠しと白杖を持った少女がルコリーの肩に手を置いている。 肩に置いた手を通して、サユが魔法で話しかけてきた。 「いーじゃない。どうせ朝からいなかったんだし。  それより中庭で何してるのよ」  ルコリーは、今日初めてサユと顔を合わせる。  目隠しが昨日と違うようだ。  今日は端に植物のツルが延びている刺繍が施されている。 『戦う事になった時の整地と採寸』 「戦う、って本当に貴女が戦うつもりなの?  あと、中庭をウロウロして皆のいい笑いものになってるんだけど」  意地悪に笑って返すルコリー。  朝からサユは中庭を歩き回り、
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