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その日、奇妙な新入生が入って来た。
商家が多く、商業で富み栄えているイェンセン城国、その中で富裕層のお嬢様を集めたアイマリース女学院。
14~16歳の子で構成された「5」のクラスは騒然とした。
担任である女性の後から、その生徒が開き戸を手で確認しながら入ってきた。
設立5年目にして初めてだったのである、白杖をついた生徒は。
白杖をついている人を初めて見たお嬢様も数人いたようである。
そして目を引くのはそこだけではない。
目隠しで顔が半分隠れている。
好奇の目、半信半疑の目で見つめられる中、
目隠しの生徒は杖を振りながら教卓の横へ進んでいく。
教卓に杖が当たると担任が彼女の肩に手を置いた。
止まれ、という事だろう。
新入生は黒板の方を一度向きかけて間違いに気づき、
新調したての白いセーラーの襟と、深緑の制服の長いスカートを揺らして皆の方に向いた。
白いワイシャツとベージュのロングスカートの担任が、
暗い顔をしてヒモのついた試験管バサミを取り出す。
3つの試験管バサミには、魔使石。
3本のチョークをそれぞれにセットして、ヒモを手に巻き黒板の3箇所にセットした。
1つは、日付と日直の名前を書き、
1つは今日の予定や連絡事項を書き
1つは新入生の名前を書いた。
まるでヒモでチョークを操っているように見えるが、
彼女が実際にヒモを通して操ってるのは3つの魔法石である。
彼女の魔法は、筆記具を3つの魔法石で同時に動かせる魔法のようだ。
一時は学者を志してた彼女は、一度に3つの問題を解く勉強家だった。
板書しながら、彼女は黒板を見ずに生徒達の方を向いて話始める。
抑揚のない、無感情な声が教室に響く。
「えー、おはようございます 皆さん。
突然ですが今日からクラスの仲間が一人増えます。
彼女の名前は サユ=ガーネットさんです。
皆さんご覧のように目が見えていません。
そして」
一目見ただけでも普通の人とは違う、その彼女に他に何かあるのか。18人の女生徒はおしゃべりを止めて、次の言葉を待った。
「声が出なくて話す事もできません」
クラスルーム内のざわめきが大きくなる。
好奇心にかられた後ろの席の生徒は、
木の椅子を引いて立ち上がって目隠しの女生徒を注視する。
2,3人の生徒などは木の机に片足あげていた。
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