第01話 ~入校~

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 教卓に近い席にいるピンクの髪の巻き髪の生徒は、ことさら好奇心に目を輝かせ、 新しいおもちゃを見つけた子供のようにニヤニヤと笑っていた。 「皆さん協力して、仲良くしてあげてください」  と担任。  無茶な事をさらっと言う。  コミュニケーションが取りづらいのは必至だった。  終始口を硬く結び、無表情なサユと呼ばれた新入生。  その彼女が右側頭部の短い三つ編みとボブの黒髪をゆらしてゴソゴソと、 どこからかスケッチブックを出す。  ページをめくり、ずいっとスケッチブックを前に出す。  ”よろしくお願いします” と書かれたページが開かれていた。 ………  午前の授業の終わりを告げる鐘が鳴る。  今日は「5」のクラスでまともに授業を聞いていた者はほとんどいなかっただろう。  皆、教室の一番後ろの窓側に座った新入生が気になっていた。  しかし自由時間になってもサユに近づく生徒はいない。  みな遠巻きにヒソヒソと話し合い、話しかけるきっかけを掴みあぐねていた。  目隠しが顔の半分を覆っている姿が不気味な上、  目が見えなくて話が出来ない人にどう声をかければいいのかわからない、というより 声をかけて良いものかすらわかない。  クラス全体がそんな雰囲気だったのである。  当のサユは背筋を伸ばし、終始キレイな姿勢で席についている。  無表情で。  どこかクラスメイト達の動揺をどこ吹く風、と受け流しているようにも見える。 「さっ サユさん!」  裏返った大きな声が部屋に響き渡る。  サユは声がした方向あたりに顔を向ける。  短い眉の下には勝気な瞳、全体がピンク色で、 重力に逆らうようにハネ上がった前髪。  ツノのように編みこまれたダブルのシニヨン、 さらにそこから小さな縦ロールが垂れ下がる。  そればかりではない。一番大きな特徴がその下にあった。  これ以上ない、というぐらいに水を満たした革袋を2つ下げたような、 足を前に出す度に揺れる、前に張り出す大きな胸。  身長はこのクラスでは平均的な高さだが、 クラスいや学院でもトップクラスの大きな膨らみがサユの側で止まる。 「ばっバーキン様、いっ行かれるのですか!?」 「さすがバーキン様!」  サユに声をかけた生徒の後ろに、中小2人の生徒が遠慮がちに続く。 「今何か困っている事はありまして?遠慮なさらずにおっしゃって下さって!!
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