第01話 ~入校~

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「ふぅ…」  トイレ前で息をつくルコリー。  目の見えない人に、日々当たり前にしていることを説明するのは少し苦労した。  「ご不浄」なので手で触らせて位置や方向を確認させていいものかも悩んだ。  最後まで付き添うべきかも、悩んだ。  目隠しの少女がスカートの裾を持ち上げようとした時、 恥ずかしさを覚えて3人は慌てて外へ出た。 「だ大丈夫でしょうか、あ、あの方…」  バーディがトイレの方をうかがう。 「バーキン様、疑問に思ったのですが…」 「ん?なにマキナさん」 「あの眼隠しって何か意味があるのでしょうか。  目の見えない方って皆目隠しをしているのでしょうか」  そこへ、   ”お待たせしました” のページを開いてサユが出てきた。  「大丈夫でしたの?」 の質問に対して、”はい”のページが開かれた。  次に新たなページが開かれる。   ”目隠しは、目の見えない人の新たなファッションです。” 「まあ、やはりそうなんですの!」 「よく見ると、小さな刺繍もあってかわいいですものね!」  大嘘である。  サユは事情があって目隠しをしているが、それを話して回るつもりはない。  しかしさすがお嬢様達である。簡単に信じ込んでしまった。  なにせ、比較対象を知らないのだからしょうがない。  きっと、真実を知るのはこの学院から社会に出て数年後ぐらいになるだろう。 「さて、では案内して差し上げますわ。それとも、食事が先かしら。  時間に余裕がまだありますからどちらでもかまいませんわよ」  サユはスケッチブックをめくる。   ”すいません 2人きりにしてもらえませんか?”  これはルコリーではない、明らかにバーディとマキナのいる方向へ向けて開かれた。 「そ、そんな…」 「バーキン様、どういたしましょう?」  お下げを揺らして動揺するマキナは半泣きだ。 人見知りで背の低いバーディは、マキナの後ろに少し隠れながらルコリーにお伺いをたてる。 「マキナ、バーディ 私なら大丈夫ですわ。  お2人は先に食堂でお昼をお食べになって。  サユさんも私を探してらしたようですし、  私もサユさんに色々とお話を聞きたいですもの」  すごすごと去る二人を見送る。  廊下では何人かの生徒とすれ違う。 「ごきげんよう、バーキン様」 「ごきげんよう」  応えるルコリー。  時々通り過ぎる下級生たちがそう声をかけていく。
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