第01話 ~入校~

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 声をかけた後、その横に立つサユの姿に驚き、足早にその場を離れていく。   ”みなさん 礼儀正しいですね”  そう書かれたサユのスケッチブックのページが開かれる。 「そうでしょう、そうでしょう! 」  何故かルコリーは得意げだ。 「フフフ、私が入学した時はこの学校はひどいものでしたわ。  貴女、貴族育ちのわがまま娘ばかりが集められた場所がどうなるか、  想像できますかしら?」  ”いいえ”とサユのスケッチブック。 「大声でおしゃべりしながら好き勝手走り回って。  おサルさんの集団でしたわ。  生徒の親達の寄付で成り立つこの学院で、  先生方は注意する権限も勇気もありませんでしたし」  ルコリーは笑顔を絶やすことなく話を進める。  気さくな性格なのかしゃべる、しゃべる。  軽くステップを踏んだり。  話が長くなるのでルコリーの話を要約すると、彼女は学校中のクラスを回り、 「良家の娘なら、淑女たれ」と説いて回った。  最初は抵抗や妨害があったが、 日々穏便に過ごしたい穏健派が徐々にルコリーに賛同し、 今のような穏やかな学園が形成されていった。  悪ふざけをする生徒は少数、周りの雰囲気に流される人が多数。  校内全体が「騒ぐのはみっともない」という風潮に流れていくと、 悪ふざけ組は鳴りを潜めたのである。  長く続く話の中、サユは杖の上部を軽く掴み左右に振りながら歩く。  杖がカラカラと木の廊下の床をすべる。  話に夢中のルコリー、杖でまわりを確かめながら歩くサユ、先ほどから案内が全然進んでない。  ”それはすごいですね”のページが開かれる。  サユは無表情。  その表情から本当にそう思っているのか全くわからないが、ルコリーは得意顔。 「そうでしょ、私ってすごいでしょ!フフフ。  まぁバーキン家の長女とサルでは格が違いますからね。  新入生の案内の役目も、学校の代表とも言える私の役目と思いましたの。  そうだわ、ところで貴女出身はどちらですの?私は…」  まだ話が続きそうだ。  サユはスケッチブックのページを開きかけたが、思い直したようにそれをしまった。  サユが手を伸ばし、ルコリーの体の位置を確かめるように肩に触れた後、腕をつかんだ。 『まどろっこしいです。話があります』 「!?」  ルコリーは周りを見回す。  すぐ近くに声が聞こえたが、サユ以外は少し離れた場所を歩く生徒しかいない。
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