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声をかけた後、その横に立つサユの姿に驚き、足早にその場を離れていく。
”みなさん 礼儀正しいですね”
そう書かれたサユのスケッチブックのページが開かれる。
「そうでしょう、そうでしょう! 」
何故かルコリーは得意げだ。
「フフフ、私が入学した時はこの学校はひどいものでしたわ。
貴女、貴族育ちのわがまま娘ばかりが集められた場所がどうなるか、
想像できますかしら?」
”いいえ”とサユのスケッチブック。
「大声でおしゃべりしながら好き勝手走り回って。
おサルさんの集団でしたわ。
生徒の親達の寄付で成り立つこの学院で、
先生方は注意する権限も勇気もありませんでしたし」
ルコリーは笑顔を絶やすことなく話を進める。
気さくな性格なのかしゃべる、しゃべる。
軽くステップを踏んだり。
話が長くなるのでルコリーの話を要約すると、彼女は学校中のクラスを回り、
「良家の娘なら、淑女たれ」と説いて回った。
最初は抵抗や妨害があったが、
日々穏便に過ごしたい穏健派が徐々にルコリーに賛同し、
今のような穏やかな学園が形成されていった。
悪ふざけをする生徒は少数、周りの雰囲気に流される人が多数。
校内全体が「騒ぐのはみっともない」という風潮に流れていくと、
悪ふざけ組は鳴りを潜めたのである。
長く続く話の中、サユは杖の上部を軽く掴み左右に振りながら歩く。
杖がカラカラと木の廊下の床をすべる。
話に夢中のルコリー、杖でまわりを確かめながら歩くサユ、先ほどから案内が全然進んでない。
”それはすごいですね”のページが開かれる。
サユは無表情。
その表情から本当にそう思っているのか全くわからないが、ルコリーは得意顔。
「そうでしょ、私ってすごいでしょ!フフフ。
まぁバーキン家の長女とサルでは格が違いますからね。
新入生の案内の役目も、学校の代表とも言える私の役目と思いましたの。
そうだわ、ところで貴女出身はどちらですの?私は…」
まだ話が続きそうだ。
サユはスケッチブックのページを開きかけたが、思い直したようにそれをしまった。
サユが手を伸ばし、ルコリーの体の位置を確かめるように肩に触れた後、腕をつかんだ。
『まどろっこしいです。話があります』
「!?」
ルコリーは周りを見回す。
すぐ近くに声が聞こえたが、サユ以外は少し離れた場所を歩く生徒しかいない。
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