第02話 ~端緒~

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第02話 ~端緒~

       30/30 「ええ~~~~っっっ!!」  話せない無表情で目隠しをした少女に、魔法で話しかけられ思わず大声が出た。  ルコリーは声が大きい。  その絶叫は窓ガラスが震える程の大きな声となった。  普通とは違うサユの姿が珍しいのか、廊下を歩いてる者は2人に注目しているが、 ルコリーの突然の絶叫に多くの者が不安を感じ、ザワつきはじめた。 『うるさいっ このバカ!静かにしろ!  とにかく他人の邪魔がなくて、広めの場所へ案内しろ、ください』 「ええっ!?あっええ、ええ!?」  動揺したルコリーはサユの話し方が、少しブレた事に気がついていない。  サユは杖を体に寄せて柄のやや中ほど持ち、 左手でルコリーの右の二の腕を軽くつかんでゆする。 この体勢で案内しろと催促しているようだ。  中庭に出てきた2人。  アイマリース女学院の案内と言っても、元々は商家の木造の家を改築したもので 8つの教室と食堂、運動場と室内運動場とこの中庭ぐらいしかない。  あとは、少し離れたところに寮があるが今は案内する必要はない。  運動場は広いが、正門から校舎へ続く馬車道の隣にあり、 人目に付きやすいし休み時間とあって、利用している生徒も多い。  校舎と室内運動場、その2つを繋ぐ廊下に囲まれたこの中庭なら、 時折人が通るぐらいでまだ人目に付きにくい。  低い樹木も植えられていて、さらに都合が良い。 『ねぇ、さっきから手に何か柔らかいものがあたるのだけど、これ何かしら』  サユが魔法で話しかける。 「何って…胸にきまってるじゃない…」  廊下を歩いてるいる間、サユが左の手の甲でふにふにと、 胸の横をつついてくるのを不快に思っていたルコリー。 『え!?そんなまさか。貴女私と同じ年齢ですよね。  それが師匠と同じぐらい、いやそれ以上の…』  ルコリーは、右胸を軽く掴まれた。 「ばっばかぁぁっ!」  羞恥と怒りの声を上げ、サユの左手をつかみ上げる。 「女子同士でもやっても良い事と悪い事の区別も!  ああっもう貴女、色々おかしいですわよ!」  揺れる胸を腕でガードするように押さえつける。 「それに話せるなら、話せるって言いなさいよ。みんなを騙して楽しいのかしら?」  さらに怒りを増した声でルコリー。  サユは左手を取られていたがすました顔で、 『特技魔法は他人に教えないのが鉄則、って親に教えてもらってないのですか?
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