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木々すら眠る、闇が世界を支配する時間──。
キラキラと光を放つ星々を見上げて、少女は問いかけた。
「ねぇ…私って、何なのかな?」
少女の周りには、平原辺り一面に歪な機械(アクマ)の残骸が広がっている。
「…どういう意味だ、そりゃ」
大口径のリボルバーに弾丸を再装填させながら、男性は少女の背中に言葉を投げる。
「そのままの意味よ。……私は結局、人間にも神にも成りきれないまま…この世界を生きてる」
ギュッと、右手に握る杖に力を込めた。
「ねぇ、答えてよクロス。私は………いつまでこんな風に生きればいいの? 何のために………生きていけばいいの?」
クロス・マリアンが見つめる少女の背中は、年相応の少女のものより一回りほど小さい。
こんな、小さな背中に──運命という重いモノがのしかかっているのだ。
不安にもなるだろう。
こんな、血で血を洗うような戦争の中で、それこそ生きる目的を見失ってしまうくらいに──。
「……自分のために生きればいいだろ」
「それは無理よ」
少女は即答した。
「だって私は、『神を殺すために生み出された』のだから」
桜のような薄紅色の髪が風に揺れる。
「私は私のために生きてはいけないの」
振り向かれた少女の顔は、とても儚げ。
クロスは問う。
「辛いか?」
「……辛い。辛いよ。生きることが辛くて仕方ない」
不意に少女の瞳に涙が滲む。
「でも、これが私の運命……」
手許の杖を消して、イノセンスの発動を停止させた少女に、クロスは言った。
「……いつか、お前が自分のために我が儘できる日が来ると良いな………
──アリアベル」
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