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「ここだ、アヴァンシア」
広い地下空間を歩いた先に案内されたのは、一際大きな扉。
「この部屋で、今ウォーカーは左腕を武器化させる特訓を──」
「アレン!!」
バターン!
バクさんの説明をスルーし、超・強引に扉を開け放って、高い天井の部屋に足を踏み入れた。
室内には、何故だか煙のような霧のようなものが充満していて、部屋の中央にアレンの姿を発見する。
……瞬間、今の今まで抱いていた心地良い心臓の高鳴りが──殺意にも似た激情へ変わった。
なぜなら──
「ウォーカーさんっ、良かったらこのタオル使ってください!」
「わ、ありがとうございます。蝋花さん」
見ず知らずの女の子と、アレンが仲睦まじそうにやり取りをしていたからだ。
しかも、三つ編みの眼鏡を掛けた彼女の瞳──あれは、ヤバい。
あの眼は、恋する瞳だ。
相手は?
考えるまでもない。アレンだ。
これはマズい。非常に、超絶マズい事になっている。
というか完全に迂闊だった。アレンみたいなイケメンがモテないはずないのに。
なーにが、『こんなにも貴方(アレン)が好きなんだから!』だよ。
3秒前の自分を殴りたい。
「アヴァンシア! 少しはこちらの指示に従ってくれ! あと最低限話を聞くくらいの余裕を──」
「バクさん……
ちょっと黙っててくれません?」
にっこり。
微笑んでみせるも、その目は笑っていない。
一方、バクさん。
こちらのただならぬ怒りのオーラを感じ取ったのか、
「…………ハイ」
と、小さく返事をした。
三つ編みの女の子から受け取ったタオルで額に浮かぶ汗を拭いたアレンが、こちらに気付く。
「……ミュア?」
呼びかけを受け、私はバクさんからアレンへと視線をスライドさせた。笑顔で。
「アレン」
こちらも名前を呼び返し、笑顔を保ったままアレンのもとへ歩いていく。
・・・・・・
「良かった。思ってたよりずーっと元気そうじゃない」
「…? は、はい…」
私の声音に違和感を覚えたのか、アレンは半笑いで応じる。
・・・・・・
「心配して損しちゃったわ」
「…あの、ミュア?」
「何?」
「もしかして──怒ってます?」
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