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「怒ってます?」…だと?
ええ、そうですとも。ブチ切れ寸前。ミュア火山大噴火まで秒読み。
「別に?」
笑顔を解いて、腕を組み、明後日の方向に首を動かした。
「アレンがどこの誰とイチャイチャしようが、それはアレンの勝手だし?」
「…ミュア」
ぶっきらぼうに言った私に、アレンのちょっと怒ったような声が掛けられる。
「そんな言い方は良くありませんよ。蝋花さんに失礼です」
蝋花を庇うような言いように、イラッとした。
「あぁそう。もうそんなに仲良くなったの。良かったわねアレン」
「……ミュア、どうしてそんな事言うんですか? 口悪いですよ」
「ほっといて!」
黒アレンに口悪いとか言われたくない。
「……………」
「……………」
2人の間に沈黙が流れる。
その間、私はずっと別の方向を見てアレンから目を逸らし、逆にアレンは私を見ていた。
先に動いたのは、私だった。
「…悪かったわ。邪魔したわね」
ぷいとそっぽを向いて、カツンカツンと靴音を鳴らして部屋を出て行った。
アレンは、追いかけて来なかった。
☆
自身の病室にて──。
私は暗いオーラを発して、ベッドの端っこに腰掛けていた。
「はぁあ~…」
口から出るのは、もう何度目かも分からない溜め息。
──バカだなぁ、私。
アレンが生きてたって言うのに、くだらないケンカしちゃった。
でも恋敵の出現は由々しき事態。なんとかしなければ。
「………なんとかって、どうすりゃいいの」
思えば、誰かを愛するという経験は、今までなかった気がする。
いわゆる、初恋。
……どうしょう、初恋は叶わないって何かの本で読んだことがあるような、無いような……
イヤ、現時点での問題はそこじゃない。
アレンとのこのギクシャクとした雰囲気をなんとかしなければならない。
「…ドルチェ。私ね…アレンが生きてるって分かった時、心底ホッとした」
ぱた、と頭に乗ったドルチェが一度翼を動かす。
「でも、私は…私だけは、腕の中でどんどん冷たくなっていくアレンを見たから……実際に会わないと、安心できなかった」
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