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あの時の喪失感は、多分一生忘れない。
頭の中が真っ白になって、現実を認識できなくなって……。
「あんな想い、もう絶対したくない」
ぱた、ぱた。
ドルチェは両翼をひらめかせ、尻尾で病室のドアを指した。
『なら、早く仲直りしてもっと強くならないと』
そう言っているようだった。
「…うん。そうだね。ちゃんと謝らなきゃね」
ベッドから立ち上がって、病室のドアを開けた。
「うわっ」
……開けたら、目の前にアレンがいました。
「…アレン?」
「あ、えっと、ミュア、その」
「ごめん」
虚を突かれたらしいアレン。反応するまで一瞬間が空く。
「ごめん。アレン。私が悪かった」
「そ、そんな! 僕の方こそ…その、ミュアの気持ち考えなくて、すみませんでした」
お互いに、頭を下げ合って謝る2人。
……なんか、おかしくない?
「私はともかく、なんでアレンが謝るの?」
問いかけると、アレンは顔を上げて申し訳なさそうに言った。
「その、バクさんが言ってたんです。すごく僕の事を心配してたって」
「……」
「だから、ミュアを守れなくてごめん」
アレンは──
私を守れなかった事を、責めていたのだ。
「…バカじゃないの」
「え」
守れなくてごめん。
その台詞だって、本来は私が言うべきものじゃないか。
「アレンは、色々背負い過ぎてる。そんなんじゃ、いつか押し潰されちゃうわよ」
「そう…ですか?」
キョトンとするアレン。
自覚なし…か。重症だなこりゃ。
「だから……私が半分背負ってあげる」
「え…?」
「アレンが押し潰されないように、半分背負う。それが、パートナーである私の役目よ」
右手を取って、彼の顔を見上げる。
『そうでしょう?』と、問うように。
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