第27楽章~月と太陽の二重奏を~

4/7

15人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
あの時の喪失感は、多分一生忘れない。 頭の中が真っ白になって、現実を認識できなくなって……。 「あんな想い、もう絶対したくない」 ぱた、ぱた。 ドルチェは両翼をひらめかせ、尻尾で病室のドアを指した。 『なら、早く仲直りしてもっと強くならないと』 そう言っているようだった。 「…うん。そうだね。ちゃんと謝らなきゃね」 ベッドから立ち上がって、病室のドアを開けた。 「うわっ」 ……開けたら、目の前にアレンがいました。 「…アレン?」 「あ、えっと、ミュア、その」 「ごめん」 虚を突かれたらしいアレン。反応するまで一瞬間が空く。 「ごめん。アレン。私が悪かった」 「そ、そんな! 僕の方こそ…その、ミュアの気持ち考えなくて、すみませんでした」 お互いに、頭を下げ合って謝る2人。 ……なんか、おかしくない? 「私はともかく、なんでアレンが謝るの?」 問いかけると、アレンは顔を上げて申し訳なさそうに言った。 「その、バクさんが言ってたんです。すごく僕の事を心配してたって」 「……」 「だから、ミュアを守れなくてごめん」 アレンは── 私を守れなかった事を、責めていたのだ。 「…バカじゃないの」 「え」 守れなくてごめん。 その台詞だって、本来は私が言うべきものじゃないか。 「アレンは、色々背負い過ぎてる。そんなんじゃ、いつか押し潰されちゃうわよ」 「そう…ですか?」 キョトンとするアレン。 自覚なし…か。重症だなこりゃ。 「だから……私が半分背負ってあげる」 「え…?」 「アレンが押し潰されないように、半分背負う。それが、パートナーである私の役目よ」 右手を取って、彼の顔を見上げる。 『そうでしょう?』と、問うように。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加