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負のオーラに飲まれなかった騎士を見て、男はおや、という風に首を傾げる。
普通の人なら殺気に押し負けて戦意を喪失するものだ。そして確かに騎士二人の心はあと少しで折れる筈だった。男が意図しておる筈だった。
しかし結果はどうだ。
たった一声。
それだけで男の策は無に帰した。
只の足手纏いでしかないと思っていた貴族、声からして恐らく女性に目を向ける。
窓越しに視線がぶつかる前に扉は勝手に開いた。
「……へぇ」
男の感嘆の声にセルジュはゆったりと微笑んだ。
「こんにちは盗賊の方々様。わたくしはセルジュと申します」
セルジュは地に降り立ち、淑女の礼をとる。
ドレスの端を掴んで腰を折る様は物語の挿絵を切り抜いたかのように美しい。
盗賊団の男達も、まさか出てくるとは、と驚き、セルジュの美しさに息を飲む。そして瞳が閉じられている事にもどかしい残念さを感じた。
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