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馬車から姿を現した時点でセルジュのその片鱗を見ていた男は、刹那にして主導権を奪ったセルジュと向かい合う。
己の空気を変えた事は酷く気に入らない。だが其れを許せるだけの何かをセルジュの中に感じた。
普段なら容赦なく嬲り殺している。セルジュ程の美貌なら散々遊んでも飽きないだろうから、良い拾い物をしたと意気揚々として持ち帰るところだ。
だか其れを躊躇わせる何か。
力を持たない小動物が醸し出す理解の及ばない片鱗。
そこに、背筋がゾクゾクする程の愉悦を見出した。
故に男は嗤う。
「面白い」
獲物を狙う獣の如く、男は爛々と輝く瞳をセルジュに向けた。
その視線は当然伏せられた瞼によって憚れるが、見えない訳でないのだろうと直感的に感じた。
セルジュはそんな危険な目を向けられても平然としている。
左右で狼狽える騎士がいたが、それすらも気にならないと言いたげに。
その微笑みがたった一人に向けられていた。
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