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「それなりに、ですか」
「ああ、十分すぎるほどのそれなりに、だ」
「彼が疎ましくなった、とかではないですよね」
「それだって十分理由になるだろ?」
「そうでしょうか。そんなものは一時に過ぎないのでは?また疎ましい者が現れるのでは?」
「そうかもな。それでも俺は構わない」
「疎ましいのが理由ではないから、ですよね」
「……」
いや、待てよ、俺はつい30分程前に殺すのを決意した。そんな時にタイミングよく現れられるのか?……違う可能性も考えてみよう。その時の決意を読み取ったとしたら?俺が殺すと決めた、心を読めたとしたら可能だ。決意した時しか読めていないのなら、理由も知らないのにも頷けるし、何よりも、このタイミングでこいつが声を掛けて来たのにも納得がいく。
「殺す必要があるんだよ。あいつを。あんたは知らないだろ?勝山が裏でやっていることを」
「裏?」
「そうだよ、表立ってはしていないことだ。恐らくはそれが表に出ることはない」
「こんなに有名になったのだから、わかりませんよ」
「いや、有名になったからこそだよ」
……決意をした、ではなく、決意をさせられた、と言う可能性もある?この男は勝山を殺させようとしている、というのはどうだろうか。もしこいつが人を操れるのならば可能だ。でも何故俺に話し掛けた?何故理由を聞いている?……俺にその動機があるかどうかを調べているのか?わけもなく殺すのではなく、それなりの理由があった方がそれっぽい、ということだろうか。……だがこれではどんな能力かを絞れない。
教えない、とこの男は決めているだろうから、こっちで考えるしかないけれど。…理由か。まずは何故俺に話かけたのかを知る必要があるな。
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