君は少し、冷たいね。

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雪が降る。 冷たい雪が降る。 音もなく冷たい雪は降り積もる。 暖かな部屋の中も沈黙で満たされていた。 活けられたばかりの椿の花は美しく。 淹れたばかりの茶に湯気がたゆたう。 膝に置いた本のページは片手にとめられ、物語は先へ進まない。 なのに栞を取り上げられた本は、物語を休む事を許されず。 話の流れはきっと、良いところで停止しているのだろう。 彼女の瞳は物語を描いているのだ。 彼女にしか見えない物語を想像しているのだ。 君のその美しい髪を撫で、白い頬をなぞればこちらを向いてくれるだろうか。 白魚のようなその手を握り、僕を見てくれと願えば君は、物語を追う熱い視線で僕を見つめてくれるだろうか。 いっそ、いっそ君の全てに触れられたら。 ……全てを壊してしまえたら。 「出来ない、出来るはずがない……っ」 君は僕が作り上げた"人形"だから。 *end*
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