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捩れた復讐
リビングで、石川忠雄は一人手元の薬を見つめていた。
薬は3種類。
それはそれぞれ形状が違い、錠剤、粉末、液体となっている。
あの占い師は何者だったんだ……
そうぼんやり思いながら
忠男はその内の、錠剤を飲み込んだ。
ーー昨日、仕事帰りに忠雄は声を掛けられた。
声を掛けたのは、地下街の隅で小さな箱の前に座る占い師の男性だ。
「思い詰めていますね。
それは……仕事ではないでしょう。
ご家庭の事…………いや、少し、違う。
あなたは深く傷付けられた。
きっと数年前から」
ほんの一瞬目を合わせただけで、占い師はそう言った。
そのまま通り過ぎれば良かったのに、足を止めてしまったのは彼の言う事が当たっていると感じてしまったからだ。
雑踏の中、これだけの人間がいるのに、何故自分に狙いを定めたのか訝しんだ。
占いなど「当たるも八卦当たらぬも八卦」という言葉がある程の曖昧なものだ。
普段ならば顔を前にもどし足早に妻の和子の元へと帰っただろう。
しかしそれは、そんな声かけが今日でなければ、の話だ。
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