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「まあね。この世界には不思議なことがいっぱいあるからね。私が分らないこともいっぱいある。ロクムの本当の名前も、ね」
「ふうん? どこに行けばわかるかな? 図書館とか、本がいっぱいあるところに行けばわかる?」
「どうだろう? 本にロクムの名前が書いてあるとは思わないけど、探してみるのも楽しいかもしれないわね。他にもこの世界のこともわかるかもしれないしね。探検してみる?」
「探検!楽しそう!あっ……、でもどうしよう……。僕、探検ってまず何をすればいいかわからないよ……? インディー・ジョーンズみたいな大人じゃないし、僕……」
「ロクムは単純ねぇ。ふふう、まあいいわ。私はいつも暇しているから、手伝ってあげようか?」
「ホント!? やったー!」
「そんなに喜んじゃって。言っておくけど、手伝ってあげるけど、本当の名前を見つけるのはロクムがやるのよ?」
「うん! わかった!」
「本当かな……。じゃあ車に乗って適当にいきましょうか」
ターキッシュデライトのモノクルが夕日を反射して白く光って見えた。
* * * * *
こうして僕とターキッシュデライトは出会って、そして旅を始めたんだ。
ターキッシュデライトの運転する赤色のオープンカーの助手席で僕は黄昏に染まる風景を見ていた。
遠くには逆光になってシルエットだけになった大きな煙突と送電線が見えた。
他には何も見えなかった。
この黄昏色の風景の中に僕の知りたいことがあるのだろうか?
少し不安な気持ちもあったけど見慣れない風景の中、僕はワクワクしていた。
僕は自分が子供であることを知っている。
仕方がないのだ。
視界の隅でキラリと強い光を感じた。
横目で見てみるとターキッシュデライトのモノクルに夕陽が反射していた。
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