大掃除

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大掃除

 一人暮らしの伯父が亡くなった。  伯父はずっと独身だったし、祖父母ももう他界しているから、近い身内はウチの父親だけ。  葬式やら何やらを全部片づけた後、遺品の整理ということで、一家で伯父が暮らしていた家を片づけに行くことになった。  正直、面倒だなと思ったけれど、臨時で小遣いをくれるというので、俺も弟も頑張って手伝った。というか、頑張らないと終わらない状態だったから、必死にならざるを得なかったんだけど。  ゴミ屋敷。  それが伯父の家を見た瞬間の感想だった。  男の一人暮らしじゃ仕方ないのかもしれないけど、物の溢れ方とか家の汚れ方とか、片付いてないとかいうレベルじゃない。  貴重な物があるなんて聞いたこともないから、片っ端から捨てていいぞと父に言われ、俺と弟は、目につく物を最低限の分類だけして大きな袋に放り込んでいった。  ガラクタ、がらくた、ゴミ、ごみ、不要物。  たちまち袋はいっぱいになり、次の袋の出番がくる。  それでも夜までにはおおむね片づいたけれど、もう疲れていて帰るのも億劫だから、今夜はこのまま伯父の家に泊まってしまおうということになった。  買ってきた出来合いの品で夕食を済ませ、寒くもない季節なので、雑魚寝でいいやと、一家四人で床に横たわる。  みんなぐったりと疲れていて、たちまち眠気が襲ってきた。  ありがとう  ふいに、頭の中に声が響いた。  まだ自分が眠っている自覚はある。ということは、これは夢か。  辺りが見えない真っ暗な夢の中、また、ありがとうとお礼が告げられた。でも、何のことなのか判らない。  お礼を言っているのは誰なのか。どうして俺がお礼を言われるのか。何一つ判らなくて、俺は夢の中で首を傾げた。そして、ぼそりと疑問を口にした。 「ありがとうって、どういうこと?」  どかしてくれてありがとう これでぼくら、やっとじゆうだ  それを聞いた瞬間目が覚めた。  辺りを見ると、両親も弟も目を覚ましている。様子からして、どうやら同じ夢を見たのだと直感的に判った。 「今の…」 「どかしてくれてありがとうって、言ってたよな?」 「自由って、どういうことかしら」 「家を片づけたから、何かが自由になったってこと?」
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