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あっ、あとバイト代も上げてほしいな。
「年増でも良いの?」
「年増でも美女だからな。問題な・・・」
あれ?おかしい、な、なずなさんの声が、き、きこえてくる、よ?
だ、だめだよ?男子の1人妄想遊びに勝手に入って来ちゃ。
背筋はピンと伸び、店内は静かなのに、脳内で警戒アラームが鳴り響く。
正面に広がる商品に、目をおろおろと配らせていると、ガチャ、と音がした。
首をギギギと傾け、甲冑様を見上げると、ガチャガチャ、っとこちらに歩み
よってくる。
「あっ、あの、えっと」
「言い残すことはなぁ~い?」
甘くて誘惑的な抑揚の声で、カチャリと構えられる、どす黒いオーラが
まとわりついている剣。
「あっ、あっ」
恐怖で言葉が続かない。
だ、だめだ!最後まであきらめちゃだめだ!この崖っぷちをチャンスに
いかすんだ!
気持ちを奮い立たせ、なずなさんに告げる!
「す、すいませんでした!」
「悪即斬(あくそくざん)!!」
「いやあああああああ!!!!」
静かな店内は一遍し、悲惨な断末魔が響き渡った。
真っ二つになった毒キノコ椅子を、粗大ごみ置き場に運び終え、店内に戻ると
なずなさんは甲冑を脱ぎ終えており、カウンターでノートパソコンをいじって
いた。魚が反り返ったような形の椅子に座りながら。
見たことあるな・・・、あれだ、しゃちほこだ。何でこういうの仕入れるかね、買う人いんの?と訝し気に見ていると、スラっと伸びた足が目に付いた。
陶磁器のようにキレイな白さを、金風装飾のしゃちほこが、より引き立ててい
る。
RECモードに切り替え眺めていたら、カチャリと剣に手を伸ばす音が
聴こえた。慌てて視線を上げる。
「いや!まって!なずなさん!もうよけれないから!」
剣を左側に構え、抜刀の構えをとるなずなさんを説得する。
「だいちゃん」
「は、はい」
「信じてるからね!」
腰を落とし抜刀せん勢い!
「信用しないで!?なぜ変な所に全信頼を置く!?」
後ろのドアノブに手をかけあたふたしていると、あはははは!!と
笑い声がした。
振り返りじとーっとした眼で見つめる。
「ごめんごめん、つい熱が入っちゃった」言葉とは裏腹に、いたずらを
心から楽しんで喜んでいる素直な笑顔だった。
ずるいよな。何だか満たされた気分になり、まあいっかと思った。
いや、やっぱ命の危機は勘弁してほしい。なずなさんは剣を甲冑に立てかけ
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