第1章

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、ノートパソコンの液晶を閉じると、甲冑の両腕を折り曲げそこに載せる。 小さい取っ手が付けられた胸部を開けると、コーヒーや紅茶類、マグカップが 収納されており、マグカップを2つ取り出す。 「だいちゃん、コーヒーか紅茶どっち?」 「え? じゃあ・・・コーヒーで」 「おっけ~」 準備を始める姿を眺めていたら、急に焦りがこみ上げてきた。 「あっ、ぶ、ブラック!」 「ん?」急に張り上げた声にきょとんとした顔を向けられる。 「あ、いや、その、コーヒーといえばブラックかなって」 「ふ~ん、ブラックね~、おっけ~」 ゆったりした口調でひやかすような感じでこちらを見てくる。 「な、なんですか」 「別に~?」 そう言うと、しゃがみ込み、甲冑の両太股部を開け、右からポットを、左から ペットボトルを取り出し、ポットに水を入れお湯を沸かしはじめる。 「あの・・・、今さらなんですけど」 「ん?何?」 2つのマグカップにインスタントコーヒーを鼻歌交じりでいれている なずなさんに話続ける。 「甲冑の使い方間違ってると思うんですよね」 「え?どのへんが?」 「いやいや、今なずなさんがやってることとかですよ」 そう言いながら、ポットまで歩みを進め、真ん前に来たとき、パチン!とお湯 が沸いた音が響く。ポットを持ち上げ、マグカップにお湯を注ぐ。 「ありがと」 マグカップから立ち上る蒸気のような、やわらい笑みを向けられ 照れながらも、うっす、と小声で返事してポットを元の位置に戻した。 マグカップを受取り、しゃちほこの椅子を進められ、渋い顔をして意思表示を したのだが、なずなさんは、ぷふふっ、と笑いながら、ひょいっとカウンター の上に座りコーヒーを飲み始めた。 仕方ないのでしゃちほこ椅子に座る。 「ん~、やっぱりわかんないな」 「え?」 一瞬なんの事かわからなかったが、すぐに甲冑の使い方の事かと気付き、目線 をコーヒーから、なずなさんに向ける。 両足を軽く前後に動かしながら、胸のあたりでマグカップを抱えている。 ・・・マグカップになりたい。あっ、やばい、と思い、なずなさんの顔みると さっきのやわらかい笑顔のままだった。セミロングの髪を後ろに束ねていると ころから白いうなじが覗いている。少し慌てて、正面のごちゃごちゃした商品 を見渡した。 (何が良いかな~? あんまり考えたことなかったな~、ん~)
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