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独り言を呟きながら考えてる姿を横目で見る。このままずっと見ていたいな
って思った。また恥ずかしくなり視線を正面に戻す。少しして、なずなさんが
話しかけてきた。
「貯金箱とかの方が良かったかな?」
「いや、それも間違ってますって」
「う~ん、じゃあ、化粧台!鎧をピカピカに磨けば鏡にもなるだろうし!」
「もっと違いますって!そんなトリッキーな化粧台は引きますって!」
「良いと思うんだけどな~!空気椅子みたいに形づくって、両手は小さく前
ならえ、みたいにして突き出すの!」
「は、はあ」
「お化粧中は膝にまたがって胸板を鏡代わりに!疲れたときは膝に座って
強固な両腕と胸板に、自分の腕と背中を預け、椅子代わりに!はッ!まるで
お姫様!これはいける!そうだ!椅子にしよう!」
「ちょっ、ちょっと!なずなさん!!椅子も含め全部ダメですよ!?」
「え~!?何で椅子だめなの!?」
「どんだけ椅子好きなんだよ!!でかくてじゃまだし、座り心地悪いでしょ!?」
「むうぅ~!膝にはクッションを置く!胸板には・・・黒色のもじゃもじゃ
毛糸玉をいっぱいつける!」
「なぜ変なリアルさをつける!?気持ち悪いわ!!」
「なっ!?ひどい!!謝れ!あるふぉんすくんに謝れ!」
「その甲冑名前ついてたの!?」
「そうだよ!?当たり前じゃん!!」
「当然毎のように言うなよ!?俺が間違ってるみたいだろ!?」
「だいちゃんは基本間違ってるよ!」
「あんたに言われたくねぇー!!」
ぜえぜえ、ハアハアと2人して息を荒くする。
なずなさんはコーヒーをカウンターに置き、両手を頭上に突き出すと同時に、
すぅー!はあー!と大げさに深呼吸した。胸元に目線が行きそうになる
のを堪える。
「じゃあさ」
優しい口調で語り掛けてくる。
「はい?」
「どうしたら・・・正解?」
「え?」
なずなさんの問いに頭が真っ白になった。
甲冑の使い方、今のあるべき正解・・・。答えられない自分に焦りと不安を
感じていく。
お互い沈黙の時間を過ごしていく。
「ふっ」
「うわっ!あっつ!!」
耳元に息をかけられ、驚いてコーヒーを手元にこぼした。
カウンターにコーヒーを置き、手に息を吹きかける。
「何するんですか!?」
「ごめんごめん、リラックスさせようと思って」
いたずらな笑みからはそんなものは微塵も感じられなかった。
少しムカつき、視線を足元にやる。
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